20世紀最後のmoonriders(2000.12.26)

 ども、先日、moonriders20世紀最後のアルバムを発表しました。
相も変わらず、一筋縄ではいかない方々です。
前作というか、正確にはその一つ前のオリジナルアルバム'月面讃歌'では、自分たちのトラックを外部プロデューサに渡して、しかもプロデューサ・サイドで演奏差し替え自由にした太っ腹な作品を作るという荒技を繰り出しましたが、今回は、もっと凄い大技を繰り出してきました。
そんな、moonridersの最新作をご紹介しませう。
では。


Six Musicians on their way to the last exit 今回の作品'Six Musicians on their way to the last exit'は、実はこれまで慶一氏が公の場で語って来たメンバーが自宅で作業を行う事をによって出来上がったアルバムです。
慶一氏は、これからのレコーディングでは、民生機がこれだけ発達し、コンピュータやソフトウェアも手軽に手に入れられるようになった今、スタジオを使用する作業は時間と金がかかり過ぎるから、いわゆるプリプロを自宅で創るのではなく、レコーディングそのものもメンバー個々の自宅で作業するとあるインタビューで語っていました。
また、個々のメンバーのレコーディングの結果をネットワークでやりとりすることでmoonridersとしての作品に仕上げていく手法を取る事も語っていた訳です。
まあ、言ってみれば、今流行のP2Pによる手法で作品を創る事を提言したわけです。
しかし、今回のこの作品、確かにメンバー個々での作業により出来上がった訳ですが、先の慶一氏の発言内容とはちと違っています。
moonridersは、そのようなスタジオに頼らない手法とともに、もうひとつそこにコンセプトを加えました。
それは、今回の作品はメンバー個々が一曲ずつ責任を持って仕上げ、他のメンバーは参画しないというものです。
これが、今回のCDの帯に付けられた'タクロク、ヒキコモリ、マニアノジュナン'というコンセプトであり、故にこの作品は完全なメンバー一人一人による完全タクロク集となった訳です。
そのため、収録曲はメンバーの数だけの6曲、それではちと足りないと思ったのか、'マニアノジュナン'に合わせたのか、あの'マニアマニエラ'の収録曲である'Kのトランク'のアコースティックライブバージョンが加えられています。
スタジオでの作業はマスタリングだけですが、この際に各トラックのバランス取りは行われたと思いますが(と言っても、マスタリングは1日で行われたようですが....)、基本はタクロクですので、その点から個々の作品はかなりバラエティーに富んだものとなっています。
冒頭の岡田徹氏の'the last picnic at hanging rock'から'Kのトランク'前の6曲目、武川氏の'楽しいとうれしい'まで、個々の作品の関連性は特に無いと思って良いでしょう。
ただ、アルバムのタイトルどうり、個々のメンバーが20世紀最後の出口をそれぞれに探した結果なのかも知れません。
冒頭の岡田徹氏の'the last picnic at hanging rock'はテクノ的、かしぶち氏の'ブリキの靴'は氏お得意のポップス(メロディーはあの有名な曲のパロティなのでしょうか??)、良明氏の'あっ!何かが聴こえる'はギターを中心としたサウンドメイク、慶一氏は何か'THE BEATNIKS'時代のにおいのする'Public Cemetery'、博文氏の'アイスなぼくとアイアンなきみ'はお得意の博文節、そして武川氏はウクレレ片手に'楽しいとうれしい'と、とにかくそれぞれの曲は各メンバーの個性そのもので成り立っています。
そしてラストの'99年のQuattroライブでのアコースティックバージョンで不気味さも加えられた'Kのトランク'と、まさにmoonridersの個性の豊かさというか、メンバー個々の灰汁の強さが感じられます。
ちなみに、今回のアルバムのアートワークも秀逸です。
ジャケットは最近流行の紙仕様ですが、内側のイラストがとても素敵です。
個人的には、やっぱり汗を拭いている恰幅豊かな岡田徹氏がお気に入り。
他のメンバーも良く特徴を押さえた素敵なイラストです。
紙仕様のジャケやいわゆるデジパック仕様というのは、実はかなりコストがかかると思うのですけど、曲数も少ない事から、価格が安めに押さえられているのも、今回のアルバムの特徴と言えましょう。
さて、今回のアルバム、帯には'最終出口へ、マニア達よ殺到せよ!!'と書かれていますが、筆者はこれは新しい入り口の前でちょっと立ち止まり、メンバー個々が自分を振り返った作品では無いかと思えます。
moonridersは、その次の新しい入り口(21世紀)をしっかりと見据えているのでしょう。
個人的には次回作、つまり21世紀の第一作は、多分先に言ったP2P的なスタイルで作品を創るのでは無いかと予想します。
次回作が、また楽しみになりました。
でもなー、あの人達は一筋縄では行かないからね....次何やるか分かんないものね.....


 さて、20世紀も後わずかとなりました。
'The Musical Box'、そして当サイトは、多分後一回更新する予定です。
20世紀最後の更新は何になるのか、それは今しばらくのお楽しみと言うことで。
では(^^)/。

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