From the Vaults + 1(Part 4)〜四人囃子/ボックスセット(2002.02.11)

 この'From the Vaults'のレビューシリーズもついに五回目になりました。
当初は、'ボックス全てを一回で'などとも考えていたのですけど、さすがにこのBOXセットは、そんな生半可なもんじゃないわけで、今年に入ってからのこのサイトの更新状況も四人囃子一色に染まってしまったわけです。
各音楽雑誌も、今回の'
From the Vaults'の発売にかなり良いレビューが載っておりますが、もうまもなく発売される'Strange Days'そして来月の'Player'がどのように取り上げるのか、なかなか楽しみなものであります。
先日発売されたロック画報も、特集レビューを組んでおります。
そんな状況ですんで、こちらのほうも先を急ぐとしましょうか??
今回はDisk 4、'
PRINTED JELLY'〜'NEO-N'期、そして'89年再結成期のライブ音源のレビューと行きましょう。


PRINTED JELLY まずは、'7710月、FM東京の'パイオニア・サウンド・アプローチ'のスタジオライブ音源から三曲。
アルバム'
PRINTED JELLY'発売後の大プロモーションツアー'HARD UP TOUR'の前月に収録、ツアー序盤の11月初旬にオンエアーされたものです。
曲としては'昼下がりの暑い日'、'ハレソラ'、'カーニバルがやってくるぞ'の三曲。
実際には'シテール'を除く'
PRINTED JELLY'全曲と'なすのちゃわんやき'、'カーニバル'の計七曲がオンエアされています。
で、音の方はといいますと、これ、FM東京に保存されてたマスター使ったんでしょうか??非常にクリアなもので、バランスも素晴らしいものです。
当然、四人囃子のコアなファンは当時のエアチェックテープをまだ保存している人も多いと思います(あ、あたしも持ってます^^)が、音のクリア感、分離の良さから見てマスターか、それに準ずる音源が使用されていると思いますね、これ(もしエアチェックテープなら、よっぽど電波条件が良かったんでしょーな....)。
特に坂下氏の弾く、ARPのプロソロとRolandSH-5の音が非常に綺麗に聞こえます。
ちなみに、'
ゴールデンピクニックス'後、しばしの沈黙を続けた四人囃子(と言っても、実際には年末に札幌のラジオ出演なんてのもあった訳ですが...)は、'77年初頭の合宿を経て、63日〜4日の渋谷屋根裏での計四回のライブで復活を果たす訳ですが(このライブの動員数は、後のRCサクセションに破られるまで、渋谷屋根裏の観客動員記録だったのは有名なお話)、この頃から坂下氏の使用楽器がRolandのエレピ、ストリング・アンサンブル、モノシンセのSH-5ARPのプロソロって形になります(大きなライブではHAMMONDも使用していますが)。
このFM東京音源もその構成のようでオルガンが未使用なのです。
当然、先の渋谷屋根裏でもそうでして、この時のエレピのバッキングによる'一触即発'には、ちょっとびっくりしたんですけど....
ちなみに、'778月のNHK-FMでのスタジオ収録でも同じ機材構成でした(あたし、ちゃんと見に行きましたもん、これ)。
NHK-FMの時もアンコールに'一触即発'(と言っても、この演奏は未放送)をやったのですが、やっぱエレピを使ってました。
ちょっとショックだったんすよね??坂下さんがオルガン弾いてない姿って....
あ、それと佐久間氏のパンク化がある雑誌で日比谷野音の''ライブの頃からって書いてありましたが、あれ間違いです。
正確には、先に紹介したNHK-FMの収録期から髪を短くしてパンク化が始まっていまして....
(実は、筆者もその影響で翌日髪を短くして立てていたら、学校で白い目で見られた事をよーく覚えております^^)
'
電子音楽・イン・ジャパン'にも書いてありますが、日比谷野音の''ライブの頃には既にプラスチックスとの友人つきあいはかなり進んでいましたし....


包 さて、このDisk 4の中で一番の目玉は、後で紹介する'NEO-N'ライブの音源なのですが、それと同じくらいの目玉が何と'モロッカン・ダミーズ'のデモ音源なのです。
しかもこれが'77年に作成されたデモ、つまり'
PRINTED JELLY'期に作成されたものって点なのです。
つまり、曲自体は'77年に出来ており結局後の'
'に収録されるのですが、このデモでは''での生のストリングスでは無くて、佐久間/坂下両氏のシンセサイザーとストリング・アンサンブル、そして佐藤氏のSE的なギターで演奏されているのです。
まあ、ストリングアンサンブルとシンセサイザーのメロディーやコード構成を生のストリングスのアレンジに変えれば、多分'
'のテイクに近いものになるとも言えなくもありませんが、それでもここで聴かれるジャーマンプログレやトランス系の音の構成は、非常に注目される音源ではないか??と思えまして。
ただ、このデモの雰囲気が多分、よりポップ化を目指したと佐久間氏も後に語っていた'
PRINTED JELLY'には合わなかったんでしょうね??
結局'
PRINTED JELLY'からはオミットされてしまいますが、同時に''でもシンセサイザーでの不気味なアレンジではなくて、生のストリングスを使った事で、'ファランドールみたいに'の前奏曲に変身します。
この曲の次に収録されているのは、'787月の現テレビ東京(東京12チャンネル)、近田春夫氏が司会をしていた'ロック面白ロック’でオンエアされたスタジオライブによる'眠たそうな朝には'。
こちらもどうなんでしょうか??テレ東にマスター残っていたのでしょうか??
ただ、オンエア時はイントロの冒頭ギリギリまで、近田氏の音声がかぶっていた筈ですが、もし放送時のマスターもしくは録画音源だとするとうまく編集出来たんでしょうな???
ただ、エンディングが切れているのは多分オンエア時はそのまま番組のジングルが重なっていた筈なので、そのためかもしれません。
まあ、当時はまだステレオ放送ではなくてモノラル放送ですから、音は固まりみたいになっているのは、しょうがないでしょう。
このオンエアの翌月、四人囃子はあのエポックメイキングな日比谷野音の''ライブに臨む訳です。


NEO-N さて、この後に続く二曲がこのDisk 4の目玉と言うのは言い過ぎでしょうか??
この二曲は、アルバム'
NEO-N'発表後、わずか二回、しかも渋谷屋根裏でのライブ音源なのですが、何と言ってもこの二回のライブを持って、四人囃子は一応解散してしまうのですから。
しかも、'
From the Vaults'のライナーにもあるように、後の'FULL HOUSE MATINEE'ライブで演奏された'Nocto-Vision For You'以外の'NEO-N'の曲が演奏されたのは、後にも先にも'791020日と21日の渋谷屋根裏ライブだけなのです。
さて、今回収録された音源は、多分あのルートの音源だと思います。
ただ、収録日が'
From the Vaults'では両曲とも1020日となっていますが、事前の広告やらなんやらでは1021日になっていたりしたのですけど、多分確実に両方とも1020日の音源でしょう。
音のほうはさすがにオーディエンス録音のモノラルですので、正直かなりきつい音です。
それと、筆者が知っている音源だとすると、処理の段階で、佐藤氏のボーカルが少し引っ込んでしまっているのが残念です。
また、一部エディットも行われているんじゃないでしょうか??
曲は'Nervous Narration'と'N.P.K 442'。
このライブというより'
NEO-N'制作前(正確にはその前のシングル'拳法混乱'制作前)に坂下氏は脱退しています。
鍵盤は元メンバー茂木氏が'
NEO-N'同様、ゲストの形で参加しています。
'Nervous Narration'は、かなりドライブ感のある演奏、'N.P.K 442'はその不気味な雰囲気が非常に印象的です。
'N.P.K 442'のイントロではシーケンサーでは無くて手弾きでの演奏(多分、ライナーのほうが間違っています)、聞こえにくいのですが冒頭のボコーダボイスも演奏されているのです。
スタジオで、かなりの同期物で仕上げた'
NEO-N'の各曲ですが、こうやってマニュアルでここまで再現してしまうところが、この当時の四人囃子の凄さでしょう。
ちなみに、このライブでシーケンサーを使用したのはアンコールで演奏された'拳法混乱'でした。
このライブでは中盤に'カーニバル'や'なすのちゃわんやき'を含む'
PRINTED JELLY'、''からの曲が演奏されましたが、冒頭の二曲とそして後半は'NEO-N'からの曲が演奏されました。
但し、'
NEO-N'からの曲も'NAMELESS'、'9th NIGHT'、'NILE GREEN'、'NEO NATURE ∴450'の四曲は結局演奏されなかった、そして現在までライブで演奏されていない事を付け加えておきましょう。


DANCE Disk 4の最後に収録されているのは、'89年の復活ライブ'FULL HOUSE MATINEE'の音源です。
当然、このプロジェクトは
新譜の発売とライブの開催、そしてそのときの演奏のライブアルバム化とビデオ及びLDの発売とかなり大がかりなものでした。
何せ、あの時のライブではステージ上にかなり大がかりなセットを組み、しかもサポートメンバーを加えてアルバム'
DANCE'の収録曲を完全再現するという挙に出たわけで、今は無きMZA有明という正直言えばあまり広くない会場ですんで、そうゆう事からも音源の二次使用を前提に企画されたのでは無いかと思います。
ただ、このライブではそのタイトルにもあるように最初から夜の部が売り切れれば、昼の部(つまり'MATINEE')をやる企画だった筈で、
ライブアルバムが夜の部の演奏を収録したのに'FULL HOUSE MATINEE'とはこれいかに??と書いてあった雑誌がありますが、これはちょっと勘違いですね。
元々、'FULL HOUSE MATINEE'というライブタイトルで企画され、そこに四人囃子らしいある種のファン向けの暗号、つまり'フルハウスになったらマチネーもやるよ!'を込めたんですから。
さて、ここで収録されたのは、当時発売された
ライブアルバムビデオと異なって、923日昼の部(つまり'MATINEE')の演奏です。
このときの公演は二日間連続で、922日が夜のみ、923日が昼/夜という形で行われたのですが、レコーディング自体は三公演とも行われたかどうかは不明です。。
ただ、
ライブアルバムビデオ/LDには両日の演奏から抜粋したようなクレジットになっていますが、後にそれは923日夜の部からの演奏のみだった事が明らかになりました。
と言うことで、今回収録された音源は初出という事になります。
演奏のほうは、まさに公演の演奏をそのまま録ったものらしく、何かの編集やトリートメントも行われていない生音源のようです。
先の
ライブアルバムビデオ/LDが実際には何らかの編集等の作業が施されているのですが、それと比較するのも一考でしょう。
ただ、サポートメンバーやMacを使用したバッキングとは言え、演奏自体の質は非常に高いものです。
ちなみに、ここでは佐藤氏が登場して演奏した'Nocto-Vision For You'と'機械じかけのラム'の二曲は佐藤氏の素晴らしいギタープレイが聴けます。
'一千の夜(1000 Night)'、'Chaos'、'眠い月(Nemui-Tsuki)'の三曲も、正直'
DANCE'を完全に認めていない筆者ではありますが、曲の完成度の高さと演奏には十分満足出来る音源です。
四人囃子は、この期間限定の復活劇の後、再び長い沈黙を迎えるのでした.....


 さて、今回はDisk 4のレビューをお送りしました。
色んな雑誌のレビューやらを見ると、意外とこのDisk 4についてきちんと書かれたものが無いんです。
どうも、四人囃子というと'
一触即発'や'ゴールデンピクニックス'期の音源、そしてデビュー前の音源に注目が集まる傾向がありますけど、実は四人囃子を本当に理解するには、先のDisk 3の後半やこのDisk 4をきちんと把握するべきなんじゃないでしょうか??
確かに、'
PRINTED JELLY'〜'NEO-N'期、そして'89年再結成期は、それ以前よりマスコミへの露出も多くなり、情報量も増えたと思います。
でも、特に岡井氏も'自分にとって'
一触即発'と'NEO-N'が一番大切なアルバムだ'と言っていますし、佐久間氏も'NEO-N'を創って上で'四人囃子をちゃんとやったぞ'と言っています。
'
PRINTED JELLY'〜'NEO-N'期はもっと評価されるべき三作だと筆者は強く思う、そんな今日この頃なのです。

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