The Room Of Pirate

天国と地上の真ん中で〜Hatfield & The North(99.11.21)

 いやはや、素晴らしいブート盤が最近絶好調のHIGHLANDレーベルから出てきました。
何と、Hatfield & The NorthLondon, Rainbow Theatre公演が、ほぼフルレングスで、しかもかなり音質が改善されて発売されたのです。
そこで、今回はLondon, Rainbow Theatre公演を中心に、そんなHatfield & The Northのパイレーツ盤を紹介していきませう。
では!!!


CHEAP PHILOSOPHY さてさて、今回のお話のきっかけとなったのが、この'CHEAP PHLOSOPHY'と題されたHatfield & The NorthLondon, Rainbow Theatre公演をほぼフルレングスで収めたブート盤です。
この公演の音源はHatfield & The Northファンの間では有名なもので、ブートのビデオも存在します(但し、筆者未験)。
また、コンピレーション盤にも、この時の音源からのものも収録されていますし、以前にもブート盤が出回っていました。
しかし、今回のこのHIGHLAND盤は、ほぼベストな音源では無いでしょうか??
録音上の理由での音の切れも殆どありませんし、音質も若干高音がきついのですが、ある程度分離も良く、個人的には十分に満足出来るものだと思います。
しかも、演奏の方はさすがCANTERBURYの金字塔バンド、若干のミスも見られますが、そこがそれライブらしいところ、充実しまくっております。
特に、この公演ではPhilGuitarはあるときはJAZZ、あるときはファズ(多分、Color Soundのファズかオクターバでしょう)を聞かせたアバンギャルド、Daveとの見事なユニゾンやインプロパートの充実ぶりと、ホント大活躍です。
曲目も、後期Hatfieldの代表的なセットリストであり、当時まだ未完であった'Halfway Between Heaven And Earth'も演奏されています。
ただ、未だ未完成だったと言っても、結局歌詞が出来ていなかっただけで、演奏やアレンジは多分Hatfield版としてはほぼ完成していたと言っても良いでしょう。
歌詞が未完の部分は、Richardがスキャットで唄っていますが、これはこれで魅力的なテイクだと思います。
ちなみに、このテイクには笑い話があって先に紹介したブートビデオでは、何故か歌詞付きで収録されているとか....
どうも、ブート業者が手を加えたのでしょうが、後日このビデオを見たDaveRichardは歌詞が無いところにも歌詞付きの音が入っているのにたまげたそーな(^^)。
この公演のベストは多分冒頭の'mumps(Lumps〜Prenut)でしょう。
というか、どのライブを聴いても、この曲だけはいつも充実した演奏を聴かせてくれるのですけど....
筆者の大好きな'Your Majesty Is Like A Cream Donut'は後半にミスがあるんですけど、それでもやっぱ素晴らしい演奏ですね。
あ、それと最近のHIGHLANDレーベルはジャケがかなり楽しいのですけど、今回のジャケも名作'THE ROTTERS'CLUB'の見事なパロディーであることを付け加えておきましょう。


CANTERBURY LIVE TAPES さてさて、Hatfiledのブートと言うと意外と数は揃っていますが、音源自体は差程多くなく、オーディエンス録音よりもBBCでのセッション音源(Daveによると、BBCセッションは計二回、このほか放送音源はフランスのTV出演が二回あるとの事)が多いのですが、この'CANTERBURY LIVE TAPES'もそんな一枚です。
ただ、これのおもしろいところは前半のDave Stewartが在籍したEGGの1970年のライブ音源が二曲(と言っても、一曲が長い....)収録されているところでしょうか??
正直、EGGの音源でブート盤になっているものは、筆者はこの一枚しか知りません。
演奏のほうは、スタジオ盤に忠実で当時のリーダであったBassMont Campbellが殆どの曲を譜面に起こしていたことが良く判ります。
まあ、EGGの場合、この近代クラシック風のアレンジメントで好き嫌いが分かれるところでしょうが....
さて、Hatfiledの演奏の方ですが、こちらのほうは一部ライブ音源を含むBBC音源(と言ってもエアチェック音源のようです)の寄せ集めと言ったところでしょうか???
音質的にはブートとしては可もなく不可もなくと言ったところです。
まあ、'Your Majesty Is Like A Cream Donut'とメドレーで続く'Oh What A Lonely Lifetime'の出来が良いのが救いでしょうか??
ちなみに、BBC音源は、こちらの'OH BOY'の'KEVIN AYERS CARAVAN HATFIELD & THE NORTH/THE CANTERBURY TAPES'が決定版でしょう。
多分、'CANTERBURY LIVE TAPES'のBBC音源はこれと出所は同じのエアチェック音源でしょう。
ただ、この盤、かなりいい加減に作られてまして、何と4曲目からはジャケ裏にはINDEXが振られているのに、CD中にはINDEXがありません。
だから、聞きたい曲を探すというわけにはいかないのです。
それと、収録曲もジャケ裏の表記はひどいもので、'Halfway Between Heaven & Earth'なんざーかけらも収録されていませんし、曲のタイトルも間違いがあります。
(尚、'CANTERBURY LIVE TAPES'では元表記どうりで紹介しました)
一応、ナンバリングされて(筆者の所有しているのは、No.0123です)300枚限定となっているんですけど、きっと少なくともその3倍は出回っているんでしょーね??この様子からすると。


NbH 次は、'CHEAP PHLOSOPHY'のLondon, Rainbow Theatre公演と同時期のツアー音源。
こちらは'75年の4月の公演と事。
タイトルは'NbH'(注:ホントは'N'はひっくり返ってるのだけど、フォントが標準的な物が無いのでこのページでは'N'を使用しています)、収録されている演奏の方は当時のセットリストで言うと頭の方と後半をくっつけたような感じで、フルレングスではありません。
又、冒頭テープが切れている箇所があります。
ただ、音質は多分オーディエンス録音でしょうが、かなりまともで十分に末期のHatfieldの充実した演奏が聴けます。
特に、テープ切れがあるとはいえ、冒頭の'MUMPS〜LUMPS〜PRENUT'の充実ぶりは見事なもの。
ホント、是非フルレングスが発掘される事を切に願ってしまいます。
勿論、今度はテープ切れなしで。


LIVE 1990 こちらは、ブートじゃありませんが、紹介しておきます。
何故か、1990年に'70年代のCANTERBURY系バンドの再結成ライブが次々と行われました。
このライブは、英国のTV製作会社'Central Production'が企画/製作を行ったもので、スタジオライブを行わせ、当然TV放映されました。
何と、日本でもWOWWOWが放映したそーな。
権利問題クリアして、VIDEODVD出してくんないかなー、どっか。
このシリーズギグは'CODE90'と題されCARAVANGONG、そしてHatfieldのライブが製作/放映され、それぞれCD化されています。
ちなみに、このライブの後、それまで細々と活動が続いていたGONGは殆どオリジナルGONGに近い形に戻り完全復帰しますし、CARAVANも活動を再開するというおまけが付いています。
(CARAVANにはRichardも参加しましたが、このライブ後にすぐ脱退しています)
さて、Hatfieldのほうはと言えば、このライブ、残念ながらオリジナルメンバーは揃いませんでした。
Daveが参加を断り、その代わりにKeyboardには当時Pipの彼女(だったらしい....)のShophiaが参加しています。
録音は、さすがに正規盤ですから何も問題はありませんが、収録曲にはちょっと疑問が残ります。
何せ収録曲の半分は当時の各メンバーのソロナンバーが収録されているのですから、その点から考えるとこの部分がこのライブをやるメンバー間の妥協点だったような気がします。
まあ、それでもHatfield時代に未完に終わった'Harfway Between Heaven And Earth'が完成型のライブバージョンで聞けるのが幸いと言ったところでしょうか??


CARAVAN OF DREAMS さて、'Harfway Between Heaven And Earth'ですが、この曲は結局Hatfieldによるスタジオバージョンは完成しませんでした。
しかし、作者であるRichardはこの曲に愛着があったのでしょう。
彼が、1992年に製作した'RICHARD SINCLAIRs CARAVAN OF DREAMS'というソロプロジェクトのアルバムでついに完成型として陽の目を見る事になります。
厳密に言えば、Hatfieldのアレンジでは無いでしょうが、Richardの考えたスタイルようやくこの曲も完成した訳です。
このアルバム、非常にポップなナンバーばかりですが、Richardを始めとしたCANTERBURY MUSICの腕達者が参加し、非常に心地よいアルバムに仕上がっています。
この後、Richardはライブメンバーを連れて英国及び欧州をツアーしますが、残念ながらツアーの時にバンド名として使用した'CARAVAN OF DRAEMS'と言う名称が一悶着起こしてしまいました。
当時、既にCARAVANも活動を再開しており、CARAVANのリーダであるPay Hastingsには名前を勝手に使われたという感じがあったのでしょう。
当時、かなり激しい抗議があったそうです。
しかも、悪気は無かったのでしょうがRichardも自分がCARAVANのオリジナルメンバーであるという自負もありますから、CARAVANのナンバーもツアーで演奏したそうな....
まあ、本家争いと言ったところでしょーか???



 さてHatfield & The Northの魅力ってのは、いったい何なんでしょう??
筆者が思うにCANTERBURY MUSICの様々な要素が非常にバランス良くまとまっているところじゃーないかと思うのです。
Hatfield参加以前はEGGで近代クラシック風のナンバーを演奏していたDaveCANTERBURY MUSICのもっともポップでテクニカルなバンドCARAVANに参加し、Pay Hastingsとともに中心メンバーとして活躍していたRichardJAZZやバップスタイルの演奏を得意としていたPhil、そしてROCKでもJAZZでも自分のスタイルで叩きまくり、英国的ユーモアの固まりのPipといメンバーが、それぞれのバックグラウンドをうまく組み合わせた結果なんじゃーないかと思うのです。
その証拠に、Daveのオルガンの音もスタイルもEGGと実は大きな変化は無いし、Richardもしかりです。
でも、Hatfield & The Northとしてのスタイルは以前のバンドとはまったく別物になったのです。
まさに、マジックと言って良いでしょう。
CANTERBURY MUSICと言っても、バンド毎に千差万別です。
そんなCANTERBURY MUSICの要素がうまく合致した瞬間を作り出した、それがHatfield & The Northなのです。

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