The Room Of Pirate

I LIKE BOYS〜MISSING PERSONS(2001.02.12 2001.03.11追記)

 どうも、ちとまたここんところ更新が出来ませんで、かなり間が空いてしまいましたが、皆様、いかがお過ごしでしょ??
まったく、今年は暖冬だなんて言いながら、いつもなら3月の筈の太平洋側の雪、何と既に三回も降っちゃいまして、寒い日が続いておりますね。
さて、今回は'The Musical Box'でNew Musikを紹介した時に'80年代のテクノ/ニューウェーブ系のアルバムを紹介しようかななんて書きましたが、珍しく(??)お約束どうり、'80年代のポップで、テクノ的だけど、実はバカテクな演奏とため息混じりのボーカルが印象的だったMissing Personsのパイレーツを紹介しませう。
では。


Spring Sessin M ご存じの方も多いと思いますが、Missing PersonsZappa門下生であり、元UKのメンバーでもあった米国ロック界を代表するバカテクドラマー/Terry Bozzioが、当時の奥方/Dale Bozzio、そしてやはりZappa門下生のギタープレイヤー/Warren Cuccurulloの三名で結成され、当初はU.S.Dragsと名乗り、Zappaのマネージメントオフィスの所有するスタジオで五曲をレコーディング。
ただ、この録音テープをレコード会社に持っていっても殆ど相手にされず、結局7inch-EPとして自主制作でリリースしたところ、地元L.Aで評判となり、ラジオでもヘビーローティションされた事もあり、何と慌てたレコード会社が何社も駆けつけ、結局Capitolと契約、その時点でバンド名をMissing Personsと変えました。
U.S.Drags時代の曲や新曲をシングルでリリース、何と全米でもトップ40入りを果たした次第です。
その後、KeyboardChuck WildBassにやはりZappa門下生であり、Zappa時代にはTerryとリズム隊を組んでいたPatrick O'Hearnを迎え、バンドとしての体制を整えてレコーディング、発表したフルアルバムが'Spring Session M'というわけです。
何せ、Zappaに鍛えられた三名による演奏は、ハイスピードなニューウェーブ的なノリに加えて、シンセサイザーを効果的に使ったテクノスタイルといい、さすがにレベルの高いテクニカルな演奏を聴かせてくれます。そしてため息混じりのボーカルを聞かせてくれるDaleも、実はZappaの元に居たわけですが、さすが元プレイメイト、その美貌も見事なもので、ライブでのセクシーな出で立ちといい、かなりの評判となりました。
どの曲も捨て曲無し、しかも全てシングルカット可能なんじゃないかと思わせる良質な曲といい、演奏といい、とにかく素敵なアルバムと言えましょう。
この後、ベストアルバムを含む計三枚のアルバムをリリースしますけど、残念ながらTerryDaleが離婚してしまい、七年間の活動に終止符を打つ事になってしまいました。
(サディスティックミカバンドの解散と同じ理由ですな、これは)
さて、ちと余談を。
ここで紹介しているのは'82年に発売されたLPを'91年にCD化して発売したもので、いわゆる廉価版、ブロックバスターとしてリリースされたものです。
最近の旧譜のCD化は、リマスタリングやリミックスを施し、アナログ盤ではなくCDと言うメディアに合わせた製品としてリリースされるようになってきました。
残念ながらこのCDのような'90年代初頭というのは、とにかくCDのカタログを増やす事に各レコード会社が奔走していた事もあり、CD化に当たって処理なんかせずアナログ音源をCDに収めるだけの、、ある意味粗製濫造状態でありました。
又、CDを見てもわかるようにジャケットも何か安っぽく造られているのが判ると思います。
実際、音質的にもアナログ盤のほうが良いでしょう。
特に高音が引っ込んじゃってますしね。
このころはしょうがないのかな、やっぱし....
も一回リマスタ盤として出してくれないかな、出来れば紙ジャケ仕様で、ついでに全アルバムを再発するとかね...


(以下2001.03.11追記)

MISSING PERSONS 'RHYME & REASON' さて、再発話をしていたら、何と輸入盤ではありますが、US Capital RecordsからMISSING PERSONSの全アルバムが昨年再発していたではありませんか??
某大手輸入盤取り扱い店に行ったら、しっかりと全アルバムが並んでおりました。
で、裏のクレジットを見ると全てのアルバムにボーナストラックまで付いております。
まあ、ファーストの'Spring Session M'のボーナストラックは以前発売されたベストアルバムにも収録されたUS.Drags時代に自主制作した7inch-EPに収録されていた'Mental HopScotch'とThe Doorsの'Hallo I Love You'の二曲だけでしたけど、セカンドの'RHYME & REASON'と'COLOR IN YOUR LIFE'のほうは、何と1981年のラジオショウのライブを分割して収録、加えてデモやリハーサルテイクも一枚当たり二曲ずつ収録と、価格的には完全なブロックバスター盤ではありますが(リミックスも行われていないようです)、なかなかの充実した内容であります。
ただ、ファーストにはライブテイクを入れなかったのは曲がダブるというのもあるのでしょうけど、逆に言えば、セールス的にはセカンドサードのほうがきついとレコード会社が判断したようにも思えます。
さて、まずは'RHYME & REASON'、アルバムトップナンバーから、これまでのMISSING PERSONSとはちと違った雰囲気を見せていまして、何とアレンジや音使いに、あのYMOのにおいが感じられます。
YMOは既に'79年夏に全米ツアーを行っていますし、そのツアーも元々L.A.The Tubesの前座からスタートしていますから、L.A.を本拠地にしていたUS.Dragsがそれを耳にしていない訳はないと思いますけど、なかなか興味深いです。
あ、ジャケットのDaleの美しい姿も特筆ものでしょう。
'82年の'Spring Session M'のリリース、そしてMTVの強力なプッシュ(何せ、Daleは絵になりますから、MTVはほっとけなかったんでしょう、プロモビデオがガンガン流されました)を受け、そして'83年のU2が米国でブレイクするきっかけとしても有名なあの'US Festival'で、MISSING PERSONSの人気はまさに不動のものとなります。
このライブはTV中継され、日本でも放送されています。
(多分、筆者のビデオライブラリにもある筈なのだけど....)
日本での放送では'Walking In L.A.'のみが流されましたが、とにかくステージ映えするDaleだけでなく、TerryWarrenらの演奏も見事なもので、これならL.Aのローカルバンドではなく、十分に全米に通用するバンドだということが良く解りました。
この勢いを受けて、セカンドアルバム'RHYME & REASON'の製作に入ったのですけど、どうも、このアルバム以降、MISSING PERSONS、様子がおかしくなります。
実際、このアルバム、どうもファーストのパンク的な疾走感とテクノ感覚、そしてバカテクとシアトリカルな感覚が薄れちゃった感じがするんですね。
で、これは何かと考えると、米国ポピュラー音楽の失われた10年と言われた'80年代の悪い部分に毒されたみたいなんですな??
つまり、いわゆるAOR化という奴です。
実際、米国のレコードセールス、'80年代はまさに全ての音楽がAOR化に走った感がありまして、それに対抗したのが、所謂ヒップホップなわけですけど、この当時活躍していた米国白人系のミュージシャンは、殆ど皆、AORに走っています。
これが、どうもMISSING PERSONSの毒を奪っちゃった感じなんですよね??
しかも、何せZappa門下生のバンドですから、プロデューサが望むスタイルなんざ楽勝で演奏出来ちゃいますから、その辺、いわゆる器用貧乏に陥った感があるのですね。
で、このアルバム発売後、KeyboardChuckが脱退してしまいます


MISSING PERSONS 'COLOR IN YOUR LIFE' さて前作'RHYME & REASON'は、ついに全米トップ40に入る事が出来ませんでした。
Chuckの脱退で四人編成になったMISSING PERSONSですが、この頃Patrick O'HearnPraivate Levelからソロアルバムを発表、一時は脱退したとの噂も流れます。
加えて、DaleTerryの離婚の噂も流れるなど、バンド的にはかなり厳しい状況に陥ります。
そんななか、MISSING PERSONSはサードアルバム'COLOR IN YOUR LIFE'の製作を開始します。
しかし、このアルバムもやはりどうも今一つ思いっきりに欠けると言うか、所々光る部分もあるのですけど、前作同様、MISSING PERSONSAOR病は進行しているんですね。
作品としての質は高いのですけど、やはりMISSING PERSONSらしさに欠けるのが残念な感じがします。
ちなみに、Patrick O'Hearnの脱退話、案外噂とも言えない面もあったみたいで、実際ゲストという扱いのクレジットではありましたが、Patrick O'Hearnの実兄Robert O'Hearnの名も見られます。
このアルバム発表後、DaleTerryの離婚が決まり、バンドも解散してしまうわけですけど、結局、時代にあったスタイルでデビューしながら、時代のスタイルに流された、そんなバンドがMISSING PERSONSだったのかも知れません。
(以上2001.03.11追記)


I LIKE BOYS さてさて、ここは'The Room Of Pirate'ですから、パイレーツ盤を紹介しなきゃ行けませんね??
ここで紹介するのは、'82、'83年、そして'85年のライブ音源をまとめたものです。
タイトルは確か初期のU.S.Drags時代からのナンバー'I LIKE BOYS'から来ています。
多分、何らかの放送音源が元となっていると思いますが、音質的にはかなり良いパイレーツと言えます。
ちなみに、'82年の音源はファーストの'Spring Session M'リリース直後のヨーロッパツアーの音源で、Londonでもその演奏能力の高さとともにシアトリカルなステージングが大受けだった様子が良く判ります。
しかもこのLondon公演の音源は全12曲とほぼ当時の演奏ではフルレングスの収録と見られる点も見逃せません。
他の音源は数曲ずつですが、どの演奏もさすがに腕達者なメンバーが揃っていますから、内容的には充実したものとなっています。
ただ、少し気になるのは既に二枚目のアルバムを発表していた筈の'85年の音源なのですが、何故かファーストの頃の曲しか収録されていません。
やはり、ファーストの曲のほうが受けが良かったのでしょうか??
実際、Missing Persons自体、ファースト以降、どうも尻つぼみになっていったように思えます。
あ、ちなみに、Chuckは'84年に脱退していますんで(その後、鍵盤のメンバーの補充はしていません)、'85年の音源は別の鍵盤奏者が演奏に加わっている筈です。
ちなみに、このころのTerryのドラムキットはかなり特殊で、タム類をロートタムで構成し、頭上高くセッティングしたクラッシュやチャイナシンバル、加えてバスドラムやタム周りを黒い布で覆うなど、非常に個性的なセッティングでした。
ライブでは、TerryDaleWarrenの三名がフロントに並び、後方に向かい合う形でChuckの鍵盤類とPatrickの鍵盤とBassのブースとなっていましたが、やはり機材周りを黒い布で覆っていました。
Patrickは先にも書いたようにZappa門下生ですので、Bassの腕はかなりのものなのですけど、後にシンセ物のソロアルバムをリリースしていますが、Missing Paersons時代はYMOの細野氏のようにシンセベースを中心にプレイしていました。
でも、何といってもステージの視覚上の中心は、ため息ボイスと泣きぼくろのDaleのステージ衣装でしょう。
ドーナツ盤三枚だけを身につけてのステージは有名ですが、他にもクリスタルボールのブラとか、話題性には事欠きませんでした。
ただ、何度も書いているように演奏能力がずば抜けているからこそ、そんな色物的な部分が十分効果を挙げたのでしょう。
事実、ライブでの演奏はとにかくうまかったですね。
その辺はやはりZappa門下生のバンドらしいとも言えましょう。



 さて、今回は英国ものではなくて、米国のテクノ/ニューウェーブ系の音源を紹介しました。
正直言えば、このバンドはうますぎたって部分もあり、何せZappa門下生ですから、日本流に言うと'業界ニューウェーブ'的な部分もあったかも知れません。
でも、良いものは良いのですよ、なんつーたってね??
で、次回は英国の'80年代テクノ/ニューウェーブ系から、何か紹介しようかな??っと思ってます。
ではまた(^^)/、次回まで。

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