2.D-105完成!(8/13)
限定生産の傑作ユニット「6N-FE88ES」でつくったのが「D-105」である。
これは「ステレオ」誌7月号に掲載された長岡鉄男先生設計のバックロードホーンスピーカーである。バックロードホーンとは…まあ、自分も文系なので難しいことはわからないが、要するに口の前に手をラッパ型にして声を出すのがフロントロードである。つまりそういうこと!音波ってやつは実は後ろからも少なからず出ているわけで、でも大抵はあまり聞こえなくて無駄にしているわけだ。そいつを無駄なく出すために後ろにラッパをつけて全ての音を無駄無く出す、という大変合理的、かつエコロジック(?)なものなのだ。それなりに低音を出すには大きなユニットが必要というのは普通の考え方だが、実際にはそれは「無駄が出るのは仕方がない」と割り切っているからなのである。しかし、バックロードホーンならば、このD−105のように僅か8cmという小さな口径のスピーカーでいい低音が出てくるのである。さてこいつを作るのに約3日かかった。ほとんど接着剤のみで作ったので、時間がかかってしまったのだ。白い木工用ボンドを使ったが、これは「速乾性」というやつで、本当に乾くのが早く、お陰でかなり作業時間を短縮することが出来た。本当は写真を撮りながら作業したかったが、あまりに部屋が汚い状態になってしまったため、恥ずかしくて止めた!
写真で見るとただのすき間家具のような格好をしているが、中はかなり複雑である。スピーカーの後ろから出る低音を効率良く出すため、空気の通り道が幾重にも折り畳まれているのである。大型の管楽器を思い浮かべてもらえれば分かると思う。この「6N-FE88ES」というユニットだが、写真で見ても分かるように真っ白なコーン紙を使っている。新素材だそうだが、自分としては最初に買った単品スピーカー、ヤマハの「NS−10M」を思い出させる。あれは小さいながらパンチのある、いい音をしていた。
困ったことは、吸音材である。通常はグラスウールを中に少量詰めるのだが、なかなかこれが無い。注文してはおいたのだが結局間に合わず、フェルトで賄うことに。このフェルトも意外と無いもので、ホームセンターにあるだろうと高を括っていたのだが、聴いても「ありません」とのこと。最後は近所の文房具屋でやっと手に入れた。昔は小学校の名札に付けていたものだが…最近の小学生はどのように名札を付けているのやら。まあ、スワンにも吸音材は入れていないし、大したことにはならないと思うが。接着剤だけで組み立てていたので少しすき間ができてしまう。これを強引にボンドを上から流し込んでうめる。いいのかどうか分からないが多分大丈夫だろう。
そして板の組み立ては終わり、次は色塗りである。「ランバーカラー」という木目を生かしたペンキを発見し、それにする。「サンライズ・レッド」という色で、写真より本当はもう少しオレンジに近い色となった。部屋が明るく見え、なかなかである。
ユニットを取り付け、完成。完成したばかりで鳴らすとまだ良くない(接着剤がまだ生乾き‥)のでしばらく置き、そして試聴。
…いろいろ聴いてみて感じたのはヴォーカルがきれいに出ている、と言うこと。特に女性ヴォーカルが良い。やはり繊細なユニットの持ち味が出ているようだ。やはり低音はスワンに比べると厳しいかな…とも思わせるソフトもあったが、別のソフトではもの凄く深みのある低音を鳴らしてくれたりもした。
以下はスワンaとの比較試聴である。
試聴(1) ドラゴンアッシュ「viva la revolution」 迫力という点ではスワンか。現在のバンドの状況と同じく勢いが必要で、きれいに聴かせる105は少し物足りなさが残った。 UA「アメトラ」 この人のCDはかなりの低音が入っているが、105はこれを大変良く聴かせる。スワンは少々大げさに感じる。ヴォーカルの独特の声も105は雰囲気たっぷりに表現。 アンダーワールド「beaucoup fish」 一長一短。ダンスミュージックとしてならスワン。部屋でじっくり聴くなら105。踊るか、聴くか、気分に合わせて…という感じか。 ブラー「13」 これはスワンか。「テンダー」のようなスケールの大きい曲は特にそう。「バグマン」の様なローファイっぽい曲も少々大ざっぱなスワンが合う。 リンプ・ビスキット「significant other」 これもスワンか…と思いきや、105の出す音も深みがあり、意外と良かった。決してロックが苦手というわけではないようだ。このCDはもとより粘っこさがあるので、ちょうどこれくらいが良かったのかもしれない。 ビョーク「homojenic」 これは105。とにかく雰囲気の伝えかたがうまい。スワンは音を前方へ押してくる傾向が強いが、105はもう少し「漂わせる」感じがあり、それがこのソフトとマッチしている。
試聴(2) ピーター・ガブリエル「SO」 初期のCDなので音が少々硬いが、よくリファレンスに使う。"Don't Give Up"でケイト・ブッシュのヴォーカルの後ろへの回り込み具合はやはり105がいい。他にもこのアルバムには様々な民族楽器が使われており、それのリアルさは105がうまく出している。 ボブ・ジェームズ・トリオ「straight up」 迫力のあるジャズならスワンかもしれないが、ピアノ主体のゆったりしたものならば105の繊細感が勝る。ベースの音がくっきりしているのがスワンで、コクが出てくるのが105。 レニー・クラヴィッツ「mama said」 70年代っぽいふっくらした音はスワンのように少し大げさな音が合う。しかし、105の深みのある音も捨てがたい。これは気分次第か。 NAS「I am...」 ヒップホップ系は基本的に105が合うようだ。何故かこうしたソースを105は繊細な音をベースにしながらもこってりと鳴らす。特に低音部分は良く、スワンのは力任せに感じてしまうのだ。 ミッシェル・ガン・エレファント「rumble」 やっぱりこういうロックはスワンの迫力には勝てないね。元々音質のいい録音というわけではないし、あえてレンジの狭い録音にしていると思うので。 クイーン「グレイテスト・ヒッツ」 これはどちらがいい、とは言えない。スワンの大きく張り出す音もいいし、105の出すブライアンのギターのきれいなこと…「地獄へ道連れ」のベースはやはりスワンだろうか。とは言え105のベースの方が目立ちはしないがエレキベースらしい音だし。