10.Do It Yourself! -3
メインアンプもグレードアップ、キリのいいところで「3」に突入!である。
41.E-406V颯爽と登場!(01.2.18)
こんな私もアキュフェーズ。と言うわけでメインのアンプは交替を迎えることになった。オンキョーA-929よ、今までありがとう。君は私に「音楽の味わい」を教えてくれたように思います。
何故アンプを急にグレードアップさせたくなったのか。やはり真空管トライオードの存在が大きいだろう。「アンプの特長で音はかなり変わる」のだ。真空管のトロリと濃い音に対して、現代オーディオのシャープな音ももっと良く聴いてみたい、と言う衝動が抑えられなかったのだ。
そんなわけで、コラムにも書いたが、フロントパネルが少々はみ出しているお陰でラックから突き出たようになって、でかい顔がさらにでかく見えるE-406V。メーターの針もいかにも「オーディオ魂」を大いにそそるものがあるというものだ。意外にも奥行きはそれ程無いので、結線しようとしたがよく分からない。と言っても結線の時だけ後ろに押す、と言うことも前述の理由で不可能。どうするか。結局ラックごと手前に引き、自分が後ろに回って結線することになった。ほこりっぽさに閉口しながら(掃除しろ、たまには)、ピンケーブル、電源ケーブルを繋ぐ。電源ケーブルはこれまで使っていたキャメロットを使用する。純正ケーブルはこの価格(定価¥380000)の付属品としては細くて頼りなげだったのだ。こと電源ケーブルに関してはA-929付属の物の方が良質だった。まあ、これはきっと「あくまでこいつは仮のもの、合うものを購入せよ」ということだろう。このクラスならばそういうものだ。
困ったことにスピーカー端子がバナナプラグに対応していない。何が困るかというと、真空管と切り替えて使いたいときにいちいち結線し直さねばならなくなってしまうことだ。Yラグに今度替えてみよう。まあ、バナナプラグはどうしても「しっかり感」には頼りないものがあるし。
さていよいよ感動の音出しだ。まず木住野佳子「You Are So Beautiful」だ。これはピアノトリオだが、大変綺麗な音なのだ。美しいピアノ、迫力のベース、気持ちの良いブラッシュ、と三点そろったお買い得盤。
鳴らしてみて驚いた。ブラッシュに何と立体感が出てきたことか。ピアノも「弦を打っている」感触まで伝わってくる。そして何と言っても出色なのがベースだ。これを何と表現したら良いのだろう。これまで良く出てはいるが何となく弛みがちだったそれが、ガチッと引き締まって出てくるのだ。引き締まっていながら量感もしっかりと出ている。ベース好きには堪らない音だ。それで、寺島靖国氏推薦のケニー・バロン「モーメント」や、クリスチャン・マクブライドなど、ベースがとにかく目立ちまくっているCDをどんどんかけてみる。もう全てウットリしてしまった。このベースだけで「買ってよかった」と思わせてくれる。しかし、こういう良い音を聴くと、本当に表現に困ってしまう。評論家のようなセリフも、逆に何だかよく分からないものだが。
総じて言えることは、「これまでのA-929から、そのまま2ランク程度アップした音」と言えようか。真空管ではないので低域がどうのとか、中域の厚みが、といった特徴的なことは言えない。フラットな、良い音なのだ。
また、見栄えに関してもメーターの針がびんびん振れるのが楽しい。はっきり言って、それを照らす照明を含めて無駄なものだ。しかし、こうした無駄にむしろ心魅かれるものを感じる。オーディオなんて無くなって生きていけるし、無駄なものなはずだ。でも素晴らしいものじゃないか、という気になるのだ。大げさか?
また、リモコンの付属も意外に嬉しい。やはり音量をソフトによって変えたいことは多く、それが手元で操作できることは味気はないものの、便利であることは確かだ。しかし、本体ヴォリュームの手応えもガッチリしており、この魅力も捨てがたいので、ケース・バイ・ケースだろう。
欠点が無いわけでもない。やはりアキュフェーズ・サウンドと言うのか、「華やかな高域」がソフトによってはうるさく感じられることもあった。しかしこれは、使用したフルレンジ(パイオニアPE-16M)にトゥイーターを追加しているせいもある。やはりコンデンサー0.47μFでは少々ハイ上がりかもしれない。実際これまでも音が重なるように感じることもあった。
しかしフォステクスではこれ以下の容量のコンデンサーはない。そこで大須で物色。以前真空管12AX7を購入した店で0.22μFを見つけた。本当は0.33辺りにしたいところだったが無かったのでこれに決めた。しかしこれ、メーカーはよく知らないが¥2000もする。二つで¥4000になるので、選択ミスのことを考えると迷うところだが、ここで賭けに出た。「きっとこれなら良い音が出るに違いない」と。
半ば念じるように、コンデンサーを付け替える。配線もこれまでトゥイーター用に使っていたスペース&タイムの一番細いやつが高域がキツイこともあり、ベルデンに変更。逆にこいつは高域が少し大人しい。そうした細心の注意を払った結果、出てきた音は大変満足の行くものだった。最初は少し大人し過ぎたかな、と思ったが、それはトゥイーターをこれまでよりも前に出してやることで十分解決した。いや良かった、さすが¥2000である。
これから色々触り甲斐のあるアンプである。電源ケーブルや、スピーカーケーブルなど、どんどん試して行こうと思う。
42.基本はやっぱり電線。(01.2.25)
新しい我がアンプ「アキュフェーズE-406V」を手に入れて、そのハイエンド(っぽい)音に聞き惚れてはいるが、当然のことながら満足しているわけではない。満足したらオーディオという趣味はそこで終わりである。飽くなき追求の繰り返しなのだ。
どうしたいのか。この解像度高め系の音質に、もっと厚みを加えたい。真空管のような。一昔前のビールのCMではないが「コクもあるけど、キレもある」音にしたいのだ。これは相矛盾するような要素なので難しかろう。だからやり甲斐があるのだ。
どうするのか。まずは電源ケーブルから手を付けてみよう。現状は(1)アンプ←(2)キャメロット(パワーマスター500)←(3)自作オンボロテーブルタップ(レヴィトン)←(4)オーディオクラフトのスピーカーケーブルSLXで作った電源ケーブル(危険?)←(5)明工社ホスピタルグレードコンセントという経路になっている。やはりここでは(4)を替えてみたい。
さすがにきちんとした電源ケーブル用の電線を購入する必要がある。電源ケーブルが流行っている昨今とは言え、切り売りのケーブルはさすがに少ない。ベルデンは今も持っているし、アクロテックは細くて狙った音がイメージ的に期待できない。そうすると、CSEの350SXがあった。これは¥6000/mというかなり高価なものだが、とにかく太い。これなら厚みのある音が期待できそうだ。
と言うことで購入。プラグは余っていた明工社のホスピタルをとりあえず使う。そしてインレット部分は以前購入してずっと放ったらかしだった「ワイヤーワールド」のものを遂に使うときが来た。確か¥3000くらい。しかし、中を見てみると、普通の¥450くらいのインレットプラグ。どこが違うんだろう?特殊なメッキでもしているのかな。今話題の「クライオ処理」でも施してあるのかな。何となく騙された気もしながら、作業に取り掛かる。ハンダ付けの必要はないので、作業はラクチンだ。
そして出来上がったケーブルを早速オンボロタップに装着。ベース好きな私はレイ・ブラウンのアルバムを聴いてみる。さてどうか…おお、違うな。しかしまず気が付いたのはドラムのブラッシュやシンバル。かなり目立つようになった。コンデンサーを前回換えたものの、何となく物足りなくてコンデンサーを追加しようかと考えていたのが、その必要はどうやら無くなった。高音が変化したのは意外である。肝心の低音。これも変化が見られた。ボンつきが少なくなり、ベースが一層「見える」のだ。弦の震える音、引っかく音、それが見事に現れたのだ。これは凄い。以前のアンプでは電源ケーブルの交換はあまり変化が見られなかったことを考えれば、このアンプはケーブルの違いもよく出すものなのだろう。
「厚み」に関してはどうか、と問われれば今回は「厚みが出たわけではなかったが、質の向上は果たした」と言ったところだろうか。目的は果たせなかったわけだ。言わばさらに切れが良くなってしまったのだが、これはこれで良いなあ、ということで皆様許してくれたまえ…
43.キヤノンの威力(01.3.4)
色々付いていて遊び甲斐のあるアンプ「E-406V」。今回はバランス入力に目をつけたのだ。と、言うのもCDプレーヤー「X-1」にはバランス出力がついていたが、試すことが出来なかった。まあ、ケーブルを作ればよかったのかもしれないが、それでは実力を発揮できない、と思ったのである。アンプが対応したお陰で、遂に試すことが出来る。これは大変嬉しい。
また、ネット上の何処かのレヴューで「X-1はバランス接続が絶対に有利」という文章に出会い、一層「バランス、バランス…」と熱は高まるばかりだったのだ。
一般的に「バランス接続はノイズの影響が少ない」とされている。そして端子はそれぞれしっかりとロックされるのでプロ用機器では普及しているわけだ。さらにケーブルを長く引き回しても音質の劣化が少ないこともプロ向けの仕様と言える。まあ、逆に短いのならばあまり変わらないとも言えるのだが。
しかし、バランスケーブルの市販品は少なく、高級品ばかりである。まあ、ある程度の機器でないと付いていないので当然だが、やはり自作するのがよかろう。バランスの場合は「2芯以上同軸ケーブル」でないといけない。3つピンがあるからだ。一つにアースとしてシールドの網線をハンダ付けするわけだ。ケーブルは現在のピンケーブルと比較しやすいこともあり、カルダスのクロスリンクS1にする。キヤノンプラグはやはりブランドに拘って「ノイトリック」のものをパーツ屋で購入。1個500円前後だが、これの接続部分を「オーディオ用」としてロジウムメッキなどしたものはいきなり何千円もしてしまうのだ。オーディオとは恐ろしいものである。
さて製作だが、RCAピンケーブルよりもキヤノンプラグは大きいのでハンダ付けはしやすい。部品もバラバラになるので、ハンダ付けをする所だけを完成させればあとはガチャンガチャンとはめていって完成、というわけだ。気を付けるのはピンに1、2、3と番号が振られているので間違えないようにすることくらいだ。
完成したケーブルはやはりピンケーブルとは一味違う見かけになっている。外観がガッチリしているので、どっしりした良い音が出そうだ。接続する前に、むき出しになっていた「X-1」のバランス端子を掃除する。綿棒には汚れがたくさん着いた。ふう、やってよかった。こんなに汚れていたんではせっかくのあたしらしいケーブルが泣いてしまう。
そして接続。はめるとき「ガチャ」とロックされる音がして、安心感を醸し出してくれる。ピンケーブルも繋いだまま。聴き比べをするのだ。「E-406V」のリモコンで「CD-BAL」に切り替える。リモコンは便利だ。リスニング・ポジションのままで切り替えられるのだから。今回は寺島靖国氏風にケニー・バロンの「The Moment」。スティングがオリジナルの「Fragile」を聴く。
まず音が出て驚いた。あまりの音の良さに…では残念ながら、ない。音が大きかったのだ。随分音量に差があったわけだ。ヴォリュームを随分絞ってやっと通常の音量に。リモコンがあって本当に良かった。これでは比較もままならない。ヴォリュームを上げたり下げたりして切替えながら比較。ちょっと比較しづらい状況になってしまった。しかし、厚みはバランスの方が上だった。この曲はベースの音がもの凄い。これがか弱くならずに「ずーん」と出るのはバランスの方が良かった。ただ、繊細感はピンケーブルの方が良いようだ。バランスはちょっと荒い感じがする。とは言え、まだこのケーブルは使い始めたばかり、エージングも必要なので、しばらく様子を見ていきたい。しかし、こんなに音量が違うとはねえ…ヴォリュームも8時くらいでかなり大きな音が出てくる。あまり低いヴォリューム位置で使いたくない面もあるからなあ…
※使い始めて2週間、かなり荒さも取れて落ち着いてきた。現在はRCAは真空管のほうに接続している。
44.サメに喰われる?(01.3.11)
タイトルだけでは何のことやら分からないじゃないか。今回はスピーカーケーブルである。
台湾のケーブルブランド、「シャークワイヤー」は前から注目はしていたが、近くに無かったし、殆ど高価であるので手に取ることはなかった。しかし、最近ローエンドタイプのスピーカーケーブルが手に入るようになったのだ。「musical no.2」という型番で、¥1600/m。薄いグリーンのキャブタイヤに、スタッカード構造、つまり4芯になっているという凝った造りで、お買い得感は強い。早速試してみることにした。
現在使っているのは「D-105」にはスペース&タイム「オムニ8N」、「PE-16M」には伝統のベルデン497である。今回はベルデンに替えて試してみることにする。このベルデン、昔からある組紐のようなツイスト構造の赤と黒のケーブルだが、なかなか侮れない実力を持っている。ジャズにはうってつけの、楽しいアメリカンサウンドを醸し出してくれるのだ。また、内部配線にも使ったので繋がりも良いのだろう。しかし、低い方が今一つ苦しげな部分も垣間見え、特にアンプを換えてからはそれが耳につくようになった。試してみる価値はあろう。
このブランドは銀線を使用していることが特長だが、さすがにこの価格帯は銅線だった。4芯スタッカード構造のケーブルは、接近していない方のケーブルを組み合わせて(大体色も似た色で揃えている場合が多いのでわかりやすいはず)2芯にして使うわけだ。しかし、芯を剥く作業が倍になるのでそれが面倒なことは確か。特にこのケーブルは撚り線の1本1本が細く切れやすかったので、こっちまでがキレてしまいそうであった。さらにその前段階としてグリーン色の被膜を剥ぐ作業に手間取った。普通はスルスルと剥けるはずなのに、こいつはしっかりと中身とくっついており、横に切れ目を入れた後、縦にも切れ目を入れていって割いていかねばならなかったのだ。これは結構曲者だ。さすがシャーク(?)。
今回はアンプの端子にしっかりと接合するために、Yラグを使う。サエクのもので、1個¥600もする。圧着に失敗したら泣けてしまう。慎重に圧着ペンチに載せ、「えいっ」と力を込める。…うーん、今一つ。すき間ができてしまって、抜けそうだ。結局どれもとりあえず圧着した後、ハンダで駄目押しをする。そしてブチルゴムを巻いて仕上げる。これで一応形にはなった。スピーカー側は以前使った「ヴァンパイア」のバナナプラグを外して利用する。これはネジ留め式なので楽だ。また外して使えるし。
さて、また裏に回ってアンプに接続、Yラグの幅がギリギリだったので留めづらかったが、何とか成功、さあ試聴だ。今回はホリー・コールの「ベッドで煙草は吸わないで」。これはベースが大きめに録音されており、低音がブーミーになってしまいがちなソフトだ。ベルデンの時はちょっと苦しそうだったが、シャークではどうか。
…ふむふむ。かなりベースらしい音になっている。立体感が出てきたというか。ブーミーな部分はかなり改善されている。まあ、この「PE-16M」、それほど超低音が出るスピーカーではない。あまり欲張っても仕方があるまい。あとはセッティングの問題もあろう。しかしこのケーブル、どうやら際立った個性を主張する、と言うタイプではなさそうだ。全ての要素に於いて優秀、といったような。この価格を考えたらやはりお買い得だと思う。シャークなんてブランドから、もうちょっとワイルドなイメージを勝手に想像していたが、全くそんなことは無かった。それはある意味拍子抜けだが、しかし良いケーブルであることは事実。しばらく使い込んでみよう。
45.レコードを聴こう。(01.3.18)
たまにはアナログも良い、なんてことでレコードを引っ張り出して聴きたくなるときもある。実際、レコードの方がCDを上回っている場合だってあるのだ。例えばロリンズの「サキ・コロ」はCDとレコード両方持っているが、以前比べたときドラムの鳴り方はレコードが上だった。ドラムの「皮」の音がちゃんとする、といった感じだ。それに比べるとCDのドラムは大げさに言うとシンセっぽい音がしたのだ。プレーヤーは77年製のデンオン「DP-70M」、カートリッジはテクニカ「AT15Ea」で、それ程高級な組み合わせでもなければ、安物というわけでもない。なかなか気に入っていたのだ。
しかし、今回は重大な問題がある。我が新アンプ「E-406V」はライン専用アンプなのである。つまり「PHONO」端子はなく、このままではレコードは聴けないのだ。当然買う前から分かっていたことで、後で何とかしようとは思っていたが、やはりレコードも聴きたい。何とかするときが来た。
フォノイコライザーという機器がある。これをレコードプレイヤーとアンプの間に挟んで使うわけだが、一般的には結構高価だ。最近のちょっとしたアナログブームを反映して、テクニカから安価な製品(¥7000くらい)も出てはいるが、いくら何でもそういう間に合わせ的なものを使うわけにもいかない。比較的手ごろなのが、トーレンスから出ている¥18000くらいのやつと、真空管アンプでちょっとした人気の東京サウンドが出している¥29000のものだ。
どうしようかなあ、と思いながらハイファイ堂を覗き、店員と「レコード聴きたいんだけど、あれラインアンプでさー」なんて話していたら、「ああ、そしたらトーレンスのやつ、中古で入ったばかりですよ」という途轍も無いタイミングで言うではないか。
「何。本当か」「ええ、買います?」「買う」
と言うわけで、あっという間にトーレンスの「MM 001」を手に入れた。一応店頭で試聴してみたが、全く問題ない。はっきり言ってちゃちな外観だし、重量も妙に軽い。こんなもので大丈夫なのか、と言う感じだが、なかなかどうして、キレの良い音を聞かせてくれた。
帰宅して早速接続してみる。ただ、小さいものなのだが置き場所が無い。とりあえずCDの上に置いたが、あまり良くあるまい。だがとりあえず聴いてみよう。
「サキ・コロ」をターンテーブルに載せる。針を下ろす、という作業が何か懐かしい。さて、音は…あれ、あまり良くないな。随分安物っぽい音だ。ベールを何枚も被ったような。店で聴いたときはそんなことなかったのに…おかしいなあ。他にも色々かけてみるが不満が募るばかり。原因はなんだろう。接続部分か。そう言えばイコライザーからアンプへの接続は「CD」端子だ。この前バランス端子のに変えてから、ケーブルを付けっぱなしだったのでそのままイコライザーを繋いだわけなのだ。バランス、アンバラ両方付けていてはあまり良くないのかもしれない。というわけで、あらためて「LINE」に接続して「サキ・コロ」。
おお、今度は大丈夫だ。ベールを剥いだ、すっきりした音が聴けた。CDに比べるともう少し迫力や分厚さが欲しいところだが、この小さなイコライザーから出ている、と思えば大したものである。しかし、アナログの世界にちょっと足を踏み入れてしまった。MCカートリッジ、トーンアーム、ターンテーブルシート、インシュレーター、昇圧トランス…と色々試してみたいものばかり。やればはっきり効果が現れ、そのためものすごく金をかけてしまう…というのがアナログの恐ろしいところ。しばらくそっとしておくのが良いか、それとも、敢えてその世界にずぶずぶと…
46.コンセントの組み合わせ色々(01.4.1)
ちょっとした衝動買いで、中古のテーブルタップを手に入れた。
ベルデンの定価¥12000のやつで、ケーブルは付いていない。現在使用しているCSEの「P-22」はケーブル付きで定価¥15000。つまり、価格で見れば両方ともさほど変わりはなく、グレードアップにはならない。しかし、ケーブルを色々替えられることに喜びを見いだしたいのである、私は。
とは言え、現状はアンプもCDプレーヤーも「自作オンボロタップ」に繋いでおり、それが一番良かったからそうしているのだが、CSEの方はその他の機器しか繋いでいなかった。と言うわけで、これを機会にベルデンのタップにCDプレーヤーを再びつなぐ。ケーブルもベルデンで作ったやつにしてみよう。相性は良いはずだ。
結果は、と言うとやはり自作タップに全て繋いだ方がクオリティの高い音が出る。いくら見栄えは悪いとは言え、コンセントはレビトンだし、ケーブルもCSEのものだ。ベルデンのタップ+ケーブルの組み合わせはちょっと音がかさついてしまい、軽くなってしまったような感じになった。
今度はベルデンのケーブルの方をオーディオクラフトのスピーカーケーブル「SLX」で作ったほうにしてみた。すると、軽さはまだ残ってはいるが、かさついた感じはかなり軽減されるようになった。まだ確かにオンボロタップには敵わないかもしれないが、これはこれですっきりした音が出ているので良しとしようか。また、新たな電源ケーブルを作ってみよう、と言う気にもさせてくれる。それにしても、このベルデンのタップ、5口もあるので便利だ。今までより一口でも多いというのは有り難いものである。
今回は新しく導入したベルデンのタップでしかケーブルを試さなかったが、これで組み合わせは無数に可能になる。本当はオンボロタップとベルデンで、ケーブルをそっくり入れ替えてみるとか、そう言った実験もしてみたかったのだが、最近休みも少なくて肝心の音楽をじっくり聴く暇が少ないので、今回は見送りにする。その分買っておいて聴けなかった音楽をゆっくりと…
47.迷いは断ち切ったか?(01.4.15)
さて、前回ベルデンのテーブルタップを導入、これは一本でもケーブルを試すことのできる場所を増やしたかったからなのだ。それを今回実現することにしたい。
これを機に、一気にアンプの電源ケーブルまで含めて、グレードアップを図るのだ。つまり、2本ケーブルが必要になる。色々考えたが、結局現在「自作オンボロタップ」にも使っているCSEの350SXに決めた。と、言うより身近で簡単に手に入るメーター売りの電源ケーブルはそれ程多くはない。他ではアクロテックのやつ(¥3500/m)、現在使っているベルデン、何故そんなに高いか分からないオルトフォンのもの(¥9000くらい/m)が大須近辺で手に入る。この中ではやはりCSEが見かけも太くて使いたくなるものだ。しかも、現在使用しているのでそのクオリティは実証済みだ。
そういうわけで大須へ。色々見ていると、この350SXの完成品もちゃんと売っているのだ。しかし、¥28000もするとは。いやはや高いものなのだな。この価格帯のものならば、「ちょっと高級」なケーブルを使っている、ってな感じで自己満足度も高い。自作すれば半額以下に抑えられるのだから、コストパフォーマンスは抜群なのだ。ふふふ。
ケーブルは2m購入した。1mずつ作るのではない。0.5mと1.5mである。前者をベルデンのタップ用、後者をアンプ用として使うのだ。これで無駄の無い長さなのだ。
まず、ベルデンタップ用から。プラグやインレットはこれまで使っていたものから取り外して流用する。ここでは両方ともフルテックのものになった。このケーブルはシールド線があるので、インレット部の方だけをアースに繋いでおく。ベルデンのタップは外国製なので、アースも内部で結線されているだろうからだ。まあ、ほとんど関係ないだろうけれども。そしてプラグの方は繋がずにフロートしておく。正直な話、福田雅光氏の受け売りである。
まず、これが完成して繋ぎ替え、音を出してみる。…ふむふむ、かなり「軽さ」がなくなり、音に芯が甦った感じだ。これならばかなり期待できるだろう。
さて、アンプ用だ。これにはHUBELLのプラグとフルテックのインレットである。今度はアンプが日本製ということで、アースは関係なかろう、とシールド線はどちらも繋がずにカットしてブチルゴムを巻いた。そうして一丁上がりだ。
さて、これまでアンプ用に使っていたキャメロット「パワーマスター500」を外し、出来立てほやほやのCSEを装着する。太いのでかなりの迫力だ。これで全ての電源ケーブルが同じものになった。ちょっと壮観ではある。
よく言われていることに、「ケーブルを同じもので揃えるとあまりいい結果が出ないことが多い」ということがある。つまり、短所が増幅されてせっかくの特長を覆い隠してしまう、ということだろう。しかし、物事はやってみなければ分からないのだ。さていよいよ最終の音出しだ。
最近お気に入りのジャズギタリスト「ジェシ・ヴァン・ルーラー」を掛けてみる。一曲目がノリが良くて好きなのだが、ギターの音色、弾むベース、ブラッシュの高音と聴くべきところはオーディオ的にも多い。試聴結果は、大変満足の行くものとなった。まずブラッシュの泡立ちが眼前に迫ってきた。そしてギターはうねりまくり、ベースはガッチリ骨太になり、さらに下の方まで延びたようだ。アキュフェーズを手に入れて、付け加えたかった「厚み」がようやく得られた、という感じだ。嬉しくて次々とソフトを替えるが、結果はどれも喜ばしいものとなった。欲を言えば、村治佳織のギターがもう少しとろーりとしてくれれば完璧だ。まあ、次回からの挑戦課題になろう。
とにかく結果は大成功。これでCDプレーヤーのケーブルも替えられたらどんなに…
48.「河童」よさらば、そして再生…その1(01.5.9)
もしかしたら誰も覚えていないかもしれないが、ちょうど1年前にF-168というウーファーが上を向いた緑色のスピーカーを作った。しかし、最近は影に追いやられていた。理由は簡潔、音が好みと合わなかったからだ。最初中抜けの音がどうしても我慢できず、数々の人のアドバイスを元に、コンデンサを変更したり、と対策はした。それによって中抜けは解消したが、結局メインを争うまでには至らなかった。低域の鈍い「ずーん」と重たい感じが耳に付いてしようがなかったのである。
部屋の片隅に静かに眠る「河童」君。ただあまりにも勿体無いではないか。ウーファーこそ中古で手に入れたものの、トゥイーターはこいつのために新品を奮発したのだ。このFT-48Dの出す高域はなかなか良かった。フルレンジでは味わえない、爽やかな高音である。箱さえ替えれば何とかなるのではないか。このユニットを活かして…
そしてまる1年たった今、行動の時は来た。今回はオーソドックスに行こう。ごくごく普通なブックシェルフのバスレフを作るのだ。スペースのことも考え、また板取りの事も考えてできるだけ小さくしよう。また、そうすれば鈍い音も解消されるのではないか。
板はサブロク1枚どころか、その半分で済ます方向で考えた。特に参考になったのは去年の「ステレオ」7月号に載った「BS-106」だった。これはサブロク半裁でやっている。ユニットもウーファーは同じだ。が、トゥイーターはFT-28Dと小型のものを使っているので、寸法の変更が必要になる。48Dは結構大きいのだ。ギリギリで、高さは36cmとした。奥行きは17cm、本当はもう少し伸ばしたかったのだが、それだとどうしても半裁ではできないのだ。最近はコンパクトだが奥行きで内容積を稼ぐ、という手法がよく採られているが、それはできなくなった。仕方がない。今回はなるだけ低コストで済ませたいのだ。幅はあまり広いとルックス的にみっともないので22cmとした。
問題はバスレフダクトの位置だ。何せギリギリの寸法で作るので、実際にはリアダクトの方が都合が良いのだが、後ろはスピーカーがたくさん、とあまり良い環境ではないので絶対にフロントダクトにしたい。それにやっぱり音は前に出てこなくちゃ。ファックス感熱紙の芯は既に2本用意している。24ミリ、と小さなダクトだが、これすら下手をするとユニットのフレームに引っ掛かる恐れがあるのだ。ユニットの説明書を保管しておいてよかった。それを参考に、何とか引っ掛からないであろうと思われる個所にダクト位置を定めた。左右に2ヶ所だ。マルチダクトなのだ。1つだとさすがに小さすぎだろう。
次は2ウェイの難関、ネットワークである。「河童」君は結局13.3μFのコンデンサにコイルを咬ませて12dB/oct、そしてウーファーはスルーのネットワークとしていたが、今回はシンプルにトゥイーターは10μFだけで、ウーファーは1.0mHのコイルを使って両方とも6dB/octにすることにした。これだとかなり重なる部分が出てきそうだが、それよりも「ウーファーとトゥイーターがそれぞれ勝手に鳴っている」という状態を避けたかったのだ。クロスオーバー周波数は2kHz、のつもりである。
さらに問題はアッテネーターだ。「河童」君からこいつも取り外そうとしたのだが取り付けた位置が悪くてうまくいかず、あきらめた。ようし、こうなったら今回は固定抵抗型で行く。長岡鉄男先生の「こんなスピーカー見たことない-1-」をじっくり見て、大体6〜7dB落とせばよいはず、と踏んで2個の抵抗をパーツ屋で求めればよかろう、と決定。まあ、ローコストで済むということだ。
しかし、この「間に合わせでおいしい料理を」的な、「妥協無き妥協精神」で塗り固められた計画も、意外と前途多難だったのである。
49.「河童」よさらば、そして再生…その2(01.5.14)
板をハンズでカット依頼した後、パーツを求めて大須へ向った。必要なのはコンデンサ、コイル、抵抗だ。抵抗は初めて購入するものだったが、セメント抵抗で良いのだろう。確かに安価なものだ。「トリテック」といったオーディオ用に厳選された素材(なんだろうね、きっと)を用いたものならば高価になろうが、名古屋では意外に売っている店が無い(知らないだけなのかもしれない)ので、1つ80円くらいの白くて四角いやつを、4.8Ωと6.8Ωの2種類買った。ちょっと思惑とは違う値のやつなのだが、無かったのでそれに最も近いものにしたのだ。
コンデンサは10μFがあったので楽だったのだが、これくらいの数値のコンデンサともなると高価だ。ユニットの再生、という目標でなるだけコストは抑えたいのだが、なかなかそうも行かしてくれないようだ。といって、安価なタイプに踏み切れなかった私の態度も良くはあるまい。安いやつが無いのならばともかく、あったのだから。
大問題が生じた。コイルが無いのだ。あるのは2.2mHだけ、と言う有り様で、どうしようもないではないか。やはり、そう言った事態も想定して、事前に細かいパーツ類を揃えていなかった私に問題はある。実は「河童」君からコイルやコンデンサを取り外して使う手も考えたのだ。しかし、エポキシでしっかりと接着された彼らは、そう簡単に取れるものではなく、私に大量の汗をかかせるだけ、という結果に終わってしまった。板ごと穴を開けて取ってしまおうかとも考えたが、その労力と時間を考えると、ロクなもんじゃあない。と、言うわけでユニット意外の再利用はあきらめた、という経緯があったのだ。
もう時間はない。ようしもう決めた。コイルをほどこう。コイルは結局銅線をぐるぐる巻きにして作っているものなので、ほどけば数値を調整できるのだ。FT-48Dの説明書にちょうど大体の数値が記載されているので助かる。それにしても、2.2から1.0にするのは大変なことだ。それに勿体無い。しかし注文している時間の余裕はないのである。私は腹を括った。およそ倍の値段を払うことになるが、致し方ない。
最後の小物として吸音材があった。こいつはどうしようかとしばらく考えたが、とりあえず無しでやって見ようと決めた。切れが悪くなってしまうような気がしたからだ。鳴らしてみて気に入らなければ後で調整すれば良いことだ。
こうして製作が始まるのだが、何せ今回は小型。箱の製作自体はデスクトップ用「BS-89t」と手間は変わらない。今回接着剤は「タイトボンド」という海外製品を使ってみた。日本のいわゆる「木工用」は白いが、こいつはベージュ色をしている。接着力はかなり強いとのことなので、ハンズで見かけたのを機に使ってみようと思ったのだ。
小さくても補強をしっかりしようと、ウーファーの貫板を背面バッフルに貼り付ける。他にも貯った小さな板キレを底板に貼り付けた。指で弾くと何も補強していないときは「カーン」とか言っていたのが「か」くらいの音になった。これでかなりしっかりしたはずだ。
ちなみに今回はいつものシナ合板ではなく、安価なラワン合板にしていた。ささくれ立ったりして汚いかな、とも思ったのだが実際にはそんなことは無く、ペーパーを掛けると割と綺麗に仕上がった。とりあえず塗装はしない。時間の節約もあるが、そのままの色でも悪くない、と思ったのだ。
ターミナルは今回片方に2つ取り付けた。つまり、バイワイヤリングが可能なわけだ。しゃらくさいっ。音質的にメリットがあるのか無いのか、人によって評価は随分違うが、接点が増える、という点ではデメリットだろう。ただ、後で色々調節がしやすい、ということでこうしたのだ。ターミナル同士を繋ぐ「ジャンパー線」を色々替えてみるのも面白いだろう。
さてまたまた時間がかかるであろう、ネットワークの配線である。ハンダ付けの個所は一体幾つなのやら、段々暑くなってきた季節柄、憂鬱にさせられる。内部配線はベルデン716なので、+と−はわかりやすい。シンプルな6dB/octのネットワークにしたのは、実際には「なるだけ楽に済ませたい」という怠け根性が生んだものでもあるのだ。「もっと真剣に考えろ」とおっしゃるなかれ。別に仕事ではないんだし、失敗すればやり直せばよいのである。しかもそれはマイペースでできるし、またこのサイトのネタになるではないか。
大汗をかきながら配線をし、そしていよいよユニット取付だ。ウーファーは8つもネジがあるので、厄介かつ億劫だ。まあそんなに面倒臭がっても良くないのだが。ハンダ付けをした後、ユニットをしっかりとネジ留めする。よし、これで完成だ、という最後の一本のネジの一回しが、達成感みたいなものを感じさせてくれて心地よい。いい音出してくれよ、と念じながら。
出来上がったスピーカーは意外に見栄えが良い。自分で言うのも何だが。小型でユニット部分がフロントバッフルの多くを占めているためかもしれない。このユニットはシリーズが同じなのでデザイン的なマッチングはドンピシャなのだ。これなら市販品にも負けないな。木目の感じも良いし、パイオニアの「ピュアモルト・シリーズ」みたいじゃないか。…と言っては物凄く言い過ぎだが。また青やら緑やらで塗装すると後悔するかもしれない。
そんなわけで試聴記は次回、ということで。
50.「河童」よさらば、そして再生…その3(01.5.20)
試聴、と言ってもほとんど床にベタ置きの状態だ。あまり正確なものにはならないだろう。しかし、ハンズで一緒に買ってきた真鍮の小さな円柱、こいつをインシュレーターにすれば高さこそないが、ベタ置きよりはマシだろう。
まず、エレキベースの低音を聴こう、というわけで、マーカス・ミラーの新作。こいつはなかなか気持ち良く鳴らしてくれた。ベースの「ビーン」という音が飛びだしてくる。しかし、ちょっと大げさかもしれない。スティーリー・ダンのリマスター・ベスト盤から「バビロン・シスターズ」を掛ける。やはりベース音は良く出ているが、床の影響か、若干オーヴァーだ。逆に高いほうが物足りない。伸びていないのだ。シンバル音が心地よい木住野佳子を掛けるが、やはり「しゃーん」といつもなら伸びるべき部分が伸びてこない。明らかに高音不足か。床から反射する低音にマスキングされているのかもしれない。
とにかく、このセッティングではやはり判断がつきかねる部分が多いので、やはりスタンドは必要だ。作るか、適当なやつを買うか。とりあえず大須へ向かい、何点かスタンドを見つけたが、意外と高価だ。それにサイズ的にちょっと大きすぎる。やはり作るしかないか。
そこでホームセンターに行き、材料となりそうなものを物色する。「端材」としてコンパネや建築材の端切れを売っていたので、これをうまく使えないか、と睨めっこしながら考えた。コンパネの端切れは20×30や、30×30といったスタンドの天板や底板にうってつけの寸法があったが、やはりコンパネ、反りが激しく、とても重ね合わせて貼ったり、スピーカーを乗せたり、といった用途には向かないようだ。しかし、建築材の端切れ、これは40cm、というピッタリの長さのものがあった。こいつは支柱にうってつけである。長さも揃っているし、一本120円というお値打ち価格。6本購入した。天板・底板は結局MDFをカットしてもらった。これでとりあえずちょっとしたスタンドができるだろう。
板を2枚重ね貼りし、そこに支柱となる建築材を接着する。3本ずつ使えるので、2本は前方に使い、斜めを向けて着けた。音の反射を左右に散らす役目が主だが、デザイン的にちょっと洒落たものになるだろう。
スタンドは呆気なく完成。しばらくボンドを乾かしてからスピーカーを載せる。…ふむ、ちょうどいい高さになった。これなら正確な判断ができるだろう。
もう一度マーカス・ミラーを掛ける。…なるほど、やっぱりあの大げさな低音は床の影響だったのね、というものだった。今度はタイトでパンチ力のあるベースになっている。しばらく床置きの音に慣れていたのでちょっと寂しいくらいだが。ただ、トゥイーターからの高域は多少改善されたものの、あまり伸びていない。抵抗値が違っていたか。これほど(-7dB)絞る必要はなかったようだ。まあ、また抵抗を替えれば良いことだ。あと少しの調整でうまくいくはず。とりあえず、だがジャンパー線を替えてみよう。「バイワイヤリング」対応にしたので、2つのターミナルの間には内部配線と同じ、ベルデン716がジャンパー線として使われていたのだ。このケーブルの高域は大人しい。むしろ、ハイ上がりを調整する為に使ってもいいくらいのものだ。これを余っていた「スペース&タイム」のものに替えてみる。すると、まだまだではあるが、以前よりも伸びるようになった。まあ応急措置ということで。
他のスピーカーと聴き比べてみると、その高域の問題や、ちょっと鈍めの中低域といった部分で負けているとは思った。ただ、この大きさのスピーカーとしてはなかなかのものである。「河童」のように中抜けもないし、ポップスやロックならば躍動感を出してくれる。それに、意外と言っては失礼だが村治佳織のギターが結構艶っぽく鳴って良かった。今日聴いた中で一番良かったのはラヴ・サイケデリコで、それほど高音質ではないこのソフトから、ボーカルのちょっと引っ込んだ定位感を見事に出していたのだ。主役の座を射止めるのは少々つらいかもしれないが、調整次第では結構良いところまで行きそうな、そんなスピーカーである。
51.「現代オーディオ」の実力(01.6.2)
「コラム」欄でご覧の通り、CD-Rを購入した。ヤマハの業務用「CDR-1000」。武骨な外見と裏腹に、アポジーのD/Aコンバータを搭載するという、その隠れた実力をとくと拝見、いや拝聴したいと思う。
その容姿は武骨だが、これまで使ってきたテクニクス、ヤマハ「CDX-10000」、そして現在のエソテリック「X-1」と比べると明らかに華奢である。重量も8キロという軽量級、叩けば「カンカン」と甲高い音を出す。支える足もただのゴム足だ。オーディオ的にはあまり良くなさげな感を醸し出してはいる。しかし、店頭であの凄まじいまでのベースを聴いている私には、大した問題でもないような気がしていた。何と言っても中身が凄いに違いないのだ。
業務用らしい特徴としては、背面に空冷ファンが付いていることだ。普通オーディオ用ではヒートシンクを使うのが当たり前である。わざわざ雑音を発するファンを使うことはまず無い。しかし、これもよほど凄い中身を想像させて、楽しみを煽るのだ。接続端子はRCAはデジタル接続端子のみで、アナログ入出力は全てバランス(XLR)端子、というのもプロっぽい。まあ、正直普通に使うには不便ではあるが。
嬉しいのは電源ケーブルが着脱式であること。これで遂にCDプレーヤーにも様々なケーブルを試すことが出来るのだ。これは楽しみが増えた。付属ケーブルはちょっと頼り無さそうなものだったので、使っていなかったキャメロットの500を装着した。
セッティングをして電源をON。すると、冷却ファンの回る音がかすかに聞えてきた。もちろんパソコンのような騒がしい音は出さないが、静かな状態では少し聞える。まあ、音楽が始まってしまえば全く関係ないと言っても良い音だ。トレイを開けると、薄型のものが現れた。これまでごついトレイの機器ばかり使ってきたので、この薄さは新鮮ではあるが何だか心許ない。CDをセットしてクローズすると、ガチャンとやけに反響音を出しながら閉まった。うーん、さすが業務用は無愛想だな。
さて音出しだ。木住野佳子「You Are So Beautiful」である。…おお、ブラッシュの何と心地よいことか。ピアノもボケやにじみを取り払ったよう。そして一番感じたのは、
「ベースが立っているのが見える。」
これに尽きる。いや、本当にびっくりした。他のソフトに替えてもそうなのだが、ベーシストが目の前にいるのである!もう、この感動はなかなか表現できるものではない。聴覚だけでなく、ヴァーチャルな視覚にも訴えかけてきたのだ。オーディオを趣味にしていて良かった、とつくづく感じる瞬間ではなかろうか。
これまでの「X-1」にさほど不満があったわけではない。しかし、この表現力はレベルの高いものだったのだ。こんなに軽く、こんな頼りなげな、ファンの回る音までするプレーヤーなのに、10年前のものとは言え、大型重量級のプレーヤーを上回ってしまったのである。やはり最近のDACの威力はこういうものなのか。恐るべき、である。
結局まだ「レコーダー」としてこの機器を使っていない。何せプレーヤーとしてこの性能だ。さらに録音まで出来るとは贅沢なものだ。つくづく、良い買い物をしたと思う。
52.続・「現代オーディオ」の実力(01.6.18)
「良い買い物」の代表作(?)、ヤマハ「CDR1000」は何度も言うように、さらには型番からも分かるように、「CDレコーダー」である。しかし、購入後はや3週間が過ぎ、未だに録音はしていない。それでも全く勿体無いとは思わない。必要なときが来ればいつでもその役割を解放させてあげようではないか。もはやこいつは「プレーヤー」なのだ。その表現力は素晴らしいもので、また所有するソフトをひっくり返して聴くのに忙しいのだ。その度に「おおー」などと声にならない声を漏らしているのだから全く我ながらおめでたい奴である。
しかし、こいつが素晴らしいのは一重に内蔵D/Aコンバータのお陰だ。伊達に「アポジー」のステッカーをフロントパネルに貼ってはいないな。しかし、トランスポートとしてはどうか。はっきり言ってこれはパソコンのCD-ROMドライヴと同等と見た。OPEN/CLOSEボタンを押すと、あまりにも色気のない「がちゃーん」という音を立ててトレイが出てくる。筐体が金属なのでさらにその音は響くのだ。これはオーディオ的にはあまりよろしくないのではないか?
そんなわけで今回は、「CDR1000」を単体のD/Aコンバータとして使う、というものだ。「X-1」は「VRDCメカ」というティアックお家芸のトランスポート部を誇っている。絶対トランスポートに関しては10年前の物とは言え、こちらが上だろう。
デジタルケーブルで両機を繋ぐ。ケーブルは以前自作した日立メルトーンのものを使う。蛍光ピンクの被膜が何ともオーディオには不似合いだ。日立ならば黄色だと思うのだが。ま、それはともかく、X-1にCDを乗せ、再生してみる。………ウンともスンとも言わない。うーむ、やはりただ繋いだだけでは駄目か。マニュアルを見てD/Aコンバータとしての使い方を探したが、そういう方法は書いていなかった。考えが甘かったようだ。思えばプロ用の機器。そんなオーディオ的な使い方は想定されているはずもないのだ。分かったことは、「録音モニター時」に音を聴くことが出来る、と言うこと。つまり、レコーダーに生のメディアを挿入し、録音ポーズ状態にすれば結果的にDACとして使えるわけだ。
かなり面倒だが、そのようにしてみた。「録音ポーズ状態」を示す赤いランプが点滅したり、と視覚的にはかなりうっとうしいが、とにかくX-1のプレイボタンを押す。
あれ、あまり良くない。CDR1000で直接聴いたときよりも濁って感じるのだ。そんなものなのかなあ、と原因を考えると、まずはデジタルケーブルの性能か。どうしても接点が増えるのでケーブルやそのプラグの性能で直接よりも不利になってしまうことは確かだ。
そして、接点の汚れを疑ってみた。X-1側のプラグを外すと、案の定端子が汚れていた。とにかく掃除。顔が写るほど端子をピカピカにしてしばらく経って再び接続。そして試聴。ちなみに今回の試聴盤は「ルパン3世・ジャズ」。
……おお、今度は濁りはない。やっぱり接点の掃除は重要なのだなあ。しかし今回の目的は掃除ではない。単体と比べると、意外に違いは少ない。まだまだ単体の方が低域のレンジが広く、音の泡立つ感じは上だ。それに対してDACのみ使用の場合は、レンジ感こそ少々ナローになるが、開放感がある。つまりこちらの方が明るいのだ。微妙な違いだが、さらにデジタルケーブルを替えることでかなり良い線行くのではないか、と感じた。今後また楽しみが一つ増えたわけだ。ケーブルを取っ換え引っ換えできる個所がまた増えたのだ。いや楽しみ楽しみ。
53.補正回路?(01.6.29)
フルレンジのスピーカーというのは市販品にはあまり見られないもので、普通は2ウェイ以上なのだが、2つのユニットを同時に鳴らす、と言うことなので当然のことながらコンデンサーなどのネットワークを入れるわけだ。そうすると、計算通りなかなか行かないので色々足したり引いたり、試行錯誤を繰り返すことになりがちだ。外付けのネットワークにすれば調整はやりやすいが、見栄えの点でマイナスとなる。
さて、「河童」から再生した小型ブックシェルフ、名前は勝手に「すーぱーらわん」としたのだが、こいつの高域は少し自分には大人しい。そんなわけで、ジャンパー線を替えたりといった応急処置的な調整をしたのだが、まだ少し物足りない。そこで、以前作ってそのままになっていた補正回路を入れてみることにした。
これは抵抗とコンデンサーを直列に繋ぎ、それをスピーカー端子にパラレルに入れる、というものである。材料も今回は何故か高級だ。何と「トリテック」だ。実はこのセットと作り方は以前出張中に寄り道したオーディオショップから入手したものなのだ。その店で鳴らしていたウェストレイクのスピーカーで実験したところ、効果は歴然たるものだった。ピアノ曲を聴いたのだが、右手の「跳ねる」感じが回路付きだと見事に表現されていて、回路無しだとその感じが何か平坦で物足りなくなったのだ。そこで少々パーツとしては高価ながら、試してみようと思ったわけである。
しかし、しばらく試せないままの状態が続いた。何せ、自分の持っているものはほとんどフルレンジ。あまり意味が無さそうな気もしたのだ。今回遂にこいつを使ってやることが出来たわけなのだ。
作り方は簡単。+の方にコンデンサーが来るようにして、抵抗とハンダ付けするのだ。ちなみにコンデンサー容量は0.01μF、抵抗は4Ωである。
こいつをトゥイーター側のターミナルに並列に繋ぐ。さて音の方はどうか。
やはり、このスピーカーでも効果はあった。ハイエンドの大人しさはまだ残っているが、艶っぽさが出てきたのだ。つまり、聴く楽しさが現れてきた、とでも言おうか。これならば「つまらない高域」から「聴きやすい音」という長所となるだろう。これならば、ヘタに抵抗を替えてうるさい高域になってしまった、というリスクを選択するよりも良いのではないか、という考えになる。しばらくこれで行こうと思う。
54.黒くて太いヤツ(01.7.17)
最近のCDの使い方は「X-1」をトランスポートに、「CDX1000」をD/Aコンヴァータとしている。それには別の理由もある。早くも「CDX1000」の調子が悪く、そのままCDをかけると時々止まってしまうのだ。読み込みのしづらい輸入盤だけの話か、と思い録音したら途中でエラーが出てストップしてしまうという事態も起こった。1枚CD-Rをおじゃんにしてしまったことも悔しいが、こんなに早く故障(?)したことももっと悔しい。どの道修理に出さねばならないが、しばらくDACとして使えば支障はない、というわけだ。
さて、久しぶりの休みに大須へ出た私の目に付いたのは、とぐろを巻いた黒光りする太いケーブルであった。お、これはもしや、と思ったがやはりそうだ。S/Aラボの「HI-END HOSE 3.5」だ。このケーブルブランド、最近何かと話題なのだ。「オーディオベーシック」誌にも代表者のインタヴューが掲載されていたが、その徹底した音質へのこだわりと、出来るだけハイCPで提供しよう、という姿勢は大変共感できるものがある。話題にもなるので音質の評価は賛否両論だ。「大変クールでシャープ、素晴らしい」と絶賛する人もいれば、「低音がまるで出ない」という人もいる。どちらが本当か、試してみなければ分かるまい。
このケーブルはスピーカーにも電源にも使えるのだが、今回は電源ケーブルにする。まあ、何せ値段の張るケーブルである。スピーカーにすると結構な出費になってしまうのだ。前置きが長かったが、現在キャメロット・パワーマスター500を差しているCDX1000に使ってみるのだ。製品評価を見ているとデジタル系に使うのが良さそうだったからだ。今回はあらためてプラグやインレットを購入したのだが、プラグはHUBELLの「CAT」タイプにした。これは「猫」とはよく言ったもので、猫の手のように櫛がケーブルと垂直になるもので、さらに東西南北8方向に調整可能、という優れ物なのだ。タップは通常差し込む口が上を向いているので、そこへ垂直にプラグを差すと、段々ケーブルの重みでプラグが斜めにぐらついてくる。このプラグならば最初からケーブルは寝ている状態になるので、プラグは安定したまま、というわけなのだ。
それにしても何という堅そうなケーブルなのだ。太いし、線は5本もある。こりゃ端末処理に手間取りそうだ。考えてみると今は夏真っ盛り。いつの間にか(ここ数年はいつもこんなふうだよね)梅雨も明けたばかりで連日35℃になるかならないかの猛暑。こんなときに俺は何という買い物をしてしまったのだ。いかにも汗を呼びそうな作業ではないか。
まず部屋を冷やさなければならない。汗っかきの癖に冷房でキンキンに冷えているのも苦手な私は、なるだけ冷房は我慢して大汗かいているのだが、さすがに冷房を入れる。そして、しばらくして作業に入った。
カッターナイフで黒い被膜をなでる。いかにも堅そうなそいつは、ちょっとやそっとの力では傷をつけられるのを潔しとせず、ただ線が付いただけに終わった。前に力を込めすぎて手を何度も切った経験のある私は、「なますを吹く」ではないが、慎重に少しずつ力を込め、カッターを滑らせた。すると「こいつはこの位の力で切れる」ということが段々分かってくる。あとは楽だ。被膜の下のアルミホイルと一緒にスルリと取れた。そして、緩衝材に覆われた線材が現れる。しかし、何という分厚い緩衝材だろうか。これも音質チューニングの結果なのだろう。梱包などに使うポリエチレンのヒモに似た素材である。それをハサミで切り落とす。そうして初めて5本の線材だけとなった。4本をスタッカードで使い、残りはアース線で、絶縁体もグリーン色をしている。
この絶縁体は思ったほど堅くはなく、カッターでちょっと傷をつけてあとはニッパーで引っ張ると簡単に銅線が現れた。2本撚り合わせるとそれなりの太さになるので、プラグのネジ穴に差し込むのはギリギリだった。ちょっとプラグに手間取ったが、インレットはいつものフルテックなので楽、かくして黒くて太い電源ケーブルが完成したのであった。冷房を入れていたとは言え、物凄い汗をかいており、周りは水浸しになっていた。こんなことばかりしているとそのうち部屋が腐るに違いない。
さあ肝心の試聴。今回もディスクは「ルパン」で行こう。
これは凄い。思わず「おお」と声をあげてしまったくらいだ。冒頭のベースがまるで違うのだ。音量自体も若干大きくなったような印象を受ける。とにかくベースがしっかり大地に根を下ろし、そこから安定した腰の据わった音を出して来たのだ。ドラムのブラッシュ、シンバルも透き通って何処までも伸びていく感じ。全体的にレベルアップしたことは間違いない。やはり随分考えて造られたケーブルと言えるのではなかろうか。確かに「温かみ」だとか「まったり感」とかそう言ったものを求めてはいけないとは思うが、カチッと締まった、それでいて厚みのある、切れ込み鋭くシャープでしかも「熱い」音も聴かせてくれるケーブルである。いやいや、この熱い中、大汗をかきまくった甲斐があった。めでたしめでたし。
55.細くて白いヤツ(01.7.22)
なかなか修理に出す決心がつかず、少々面倒臭いD/Aコンヴァータとして使っている「CDX1000」。録音ボーズを示す赤いLEDの点滅にももう慣れてきた。ところでこいつと「X-1」を繋ぐデジタルケーブルはショッキングピンクが眩しい、日立の「メルトーンMTDX-105」を使っている。元々DVDとAVアンプを繋ぐために作ったもので、プラグはオーディオテクニカのものだ。あくまで仮のケーブルとして使用していたので、メインとなるケーブルを購入するか作るかしなければならないのだ。おそらくケーブルでかなり違ってくるはずである。前回電源ケーブルでかなりの成果を挙げて調子に乗っている私、この余勢を駆ってデジタルケーブルも一気にランクアップしてみようではないか。
店に行ってもまだ買うか作るか迷ってしまった私。「買う」となると一般的に高価なデジタルケーブル。一本しかない癖に何故こんなに高いのだ。その中でも福沢諭吉様でおつりがある程度もらえて、しかも安っぽくはないもの、というと古河、オルトフォン、モンスター、といった辺りがある。とは言っても現在の日立とそんなに変わらないかもしれない、という気も価格的にはする。どうしようか。
などと迷っていると、バラ売りケーブルコーナーに同軸ケーブルを発見した。ベルデンのもので、「1695A」という型番だ。¥3500/m(販売価格)と、安すぎず高すぎず、ではなかろうか。細目で被膜は白く、単線のようだ。これにしてみよう。こいつを1mだけ買い、パーツ屋でRCAプラグを買う。今回は「カナレ」のものにした。1個¥400だ。ガッチリしていて信頼できそうである。
家に帰って雑誌を見てみるとこの電線、完成品デジタルケーブルとして¥12000の商品ということで、うまくいけばコストパフォーマンスに優れたケーブルとなりそうだ。それにしても、夏だというのに毎週こんなに汗をかくようなことばかりしているな。さらに今回はハンダ付けも必要ではないか。何を考えているのだ。…などと思いながら冷房のスイッチを入れた。この日は暑いながらも気持ちの良い風が入って来たのではあったが。さすがに自然のままでは汗で電線が錆びてしまう。
素材が発泡テフロンという被膜は驚くほど柔らかく、今回は楽に端末処理することが出来た。それでもハンダ鏝を扱うときはさすがに汗をかいた。汗をこぼさないように…と注意するあまり、さらに汗が…という悪循環に陥りながらもハンダ付けは終了、細くて白いデジタルケーブルは完成した。
さてケーブルの交換だが、やはりこの作業も手をぐいと延ばしたりして汗をかきやすい。特にテクニカのプラグはきつく、抜くのに苦労した。逆にこのカナレのプラグ、妙に緩い。外したりしやすいのだが、これで大丈夫だろうか?
またしても試聴盤は「ルパン」。さてどうなるか。
フム…確かに音は変わった。抜けの良い音だ。どちらかというと高域寄りだろうか。大好きなベースの厚みが薄くなってしまったような感じもする。ただバランスは悪くなく、高域の伸びだとか、空間に広がる感じは向上しているようだ。念のため、暑かったが再び日立に戻してみる。やはりベースの厚みはこちらの方が好みだ。ただ、ちょっとブーミーと言う人もいるかもしれない。高域はベルデンに比べると面白みがなくなった。平凡に鳴ってます、という感じ。またまた再びベルデンに。高域に色気が。うーん、悩ましいぞ。一体どうすればよいのだ。一長一短だ。
エージングも必要かも、ということで評価はペンディングということにしようか。しかし、価格は明らかにベルデンの方が高いのだから、もっと頑張って欲しいことは確かだ。やはり細いと低域は痩せてしまうのだろうか?それとも、やはりプラグの緩さも関係しているような気もする。良いプラグだと「コレクトチャック」など、しっかり接続できるようになっているではないか。まあ、しばらく使ってみて、また取っ換え引っ換えしてみよう。今回は今のところ「大成功!」とは言えませんな…残念ながら。
56.グリーンのC/P抜群なヤツ(01.8.3)
前回のデジタルケーブルで今一つ満足な結果が得られずに消化不良の続く毎日を送っていたのだが(大げさな)、それを解消するにはまた色々なケーブルを試してみるしかない。とは言え、高額なケーブルにはまだ手を出さない。そう簡単に泥沼にハマる訳には行かないのだ。もうハマっている、という説もあるが。
さてそんなわけで(どんなわけだ)、迷走を続ける自作デジタルケーブル、今回は「超ハイコストパフォーマンス」を狙ってみようと思う。前回結構ケーブルを奮発しての、今一つ納得のいかない結果だったので、ちょっと安全策に走った、という説もあるが、とにかく今回はそうするのだ。
今回購入したケーブルはカナレの「905」というタイプ。色は何色かあったのだが、緑色を選んだ。大した理由はない。まあ、ごちゃごちゃしたラック裏で「おれがデジタルケーブルだ!」と主張できていいかな、と。価格は¥200/m。どうだ、と言わんばかりのハイC/Pではないか。カナレは以前スピーカーケーブルでその実力を感じていたので、安くてもきっと裏切ることはないだろう、という予感があった。プラグも前回同様カナレのもの。ちょっと緩いのが気になるが、まあこの価格帯のプラグは皆そうだ。仕方がなかろう。
今回は「ごく普通の同軸ケーブル」、普通と違うのはこいつは導体が撚り線、普通は単線ということくらいか。ちなみにベルデンのは単線、日立のは撚り線だった。別に凝った仕様はないので端末処理は楽、暑い日ではあったが慣れてきたのか、あっという間にデジタルケーブルは完成した。まあこれを見ている人達はまた火傷でもしてくれたほうが面白いのかもしれないが、そこまで体は張れない。汗は相変わらずどくどくかいたけれども。
あっという間に試聴に入るぞ。またまた「ルパン」だぞ。
…おお、これはおれの好きな音。ベースが「ずーん」と来る。分厚いぞ。しかも締まっているし。高域にしたって、確かにベルデン程の分解能はないかもしれないが、なかなかなものだ。単線と撚り線の違いかもしれないが、単線はやはり高域の伸びが特長なのだろう。撚り線の方が低域に力が出てくる。カナレは派手さはないが、要所を押えた、手堅い音にまとめている印象を受けた。それはスピーカーケーブルでも感じた印象だ。やはり業務用に使われているだけあって、そういうものなのだろう。あまり色付けはないが、実直なのだ。これを基準にすることが出来るだろう。これがあれば、一万円以内のケーブルだったらよほど個性が気に入れば別だが、必要はないとさえ言える。ん?ということはやはり高級ケーブルと競わせてみたい自分がいるわけか。いかんなあ。散財しないようにしないと。
57.「出張」Do it yourself! (01.8.12)
と、いうわけで、今回は出張ヴァージョン、北陸は石川県加賀市のカーオーディオショップ「Studio Messe」で行われた。ログハウス風のその店は私の少し年上の友人kuma氏が以前働いていたという店で、雨上がりの中来てみると既にそこにはkuma氏愛蔵のバックロード「D-3」がチューンアップされて鎮座していた。元々FE203Σだったものを208Σに、箱はバーチ材で補強され、スーパートゥイーターはF90Aが、コンデンサーと抵抗を幾重にも付けられて身悶えしていたのだ。以前「すーぱーらわん」に補正回路を入れたことは書いたが、ここの店長さんのアドバイスだったのだ。このトゥイーターのチューニングも店長さんの手になるものだ。
今回その「すーぱーらわん」と、107で作った「Owl(フクロウ)」を持参したのだが、さすがにオーディオを商売としているプロの方の前で鳴らす、というのは少々緊張を覚える。しかしどちらも大きさの割には鳴りっぷりの良いスピーカー、そんなに悪くはなかろう。まあ、どちらにしてもアドバイスをまた戴くつもりで持ってきたのだ。
閉店後ビールが開けられる和やかな雰囲気の中、会は始まった。まず、思いっきり人目を引いていた赤い漆塗りの小型スピーカー、これは本職の漆職人さんの手になるもので、形も定在波が発生しないように、平行面の一切ないエンクロージャー構造になっている。鳴らしてみるとビックリ、10cmウーファーとは思えない、深みと厚みのある音が出てきたのだ。そして、何と綺麗で美しい音なことだろう。定在波が立たないことがこの美しさに繋がっているに違いない。そして漆塗り。これもかなり効いていることだろう。またしても「ノー仕上げ」の自分のブツが恥ずかしくもあるが、これはまあ、自分のキャラということで。
さて我が「すーぱーらわん」の登場だ。鳴らしてみると自宅よりも低域がブンブン出ているような感じだ。部屋の特性なのだろうか。店長さんの提案でインシュレーターを替えてみる。そこにあったのはハーモニックスの結構高いやつ。三点支持でスピーカーとスタンドの間に設置するとアラ不思議。低域が締まり、中域の厚い音に変化したのだ。さすが高価なだけのことはある。スピーカーよりも高いのではないか。
さらには、前述したバーチ材の端切れが登場し、それをインシュレーター代わりに下にあてがってみる。これも良かった。確かにハーモニックスほどではないにしても、ブーミーさが抑えられ、程よい感じに仕上がったのだ。これは面白い。さらに色々あてがってみたくなった。帰ったら色々試してみよう。
次は「フクロウ」君の出番。こいつも鳴りっぷりの良さを発揮してくれて、フルレンジの利点である、全体のバランスの良さを出してくれていた。そして結構低音もモリモリ出ている。いつも夜パソコンに向かいながら聴くスピーカーなので、あまり音量を上げて聴いていなかったせいもあり、あらためてその実力を聴かせてもらった感じだ。片ch¥3500のユニットでこれだけの音が出るのだから、まず最初に作って聴くにはうってつけかもしれない。ちょっとギターの弦がきつく感じる、という声もあった。特に「すーぱーらわん」と比べてそう感じるとのこと。確かにそうだ。「すーぱーらわん」の音はハイ落ちで、かなり柔らかめなのだ。「フクロウ」の音がきついのはフォステクスのフルレンジユニットの特徴だから、ある程度仕方がない、きついくらいがちょうど良いかな、と思ってはいたのだが、こうやって比べてみると音の傾向は違って感じる。
すると店長さんが持ってきたのは黒い吸音材の端切れ。つまり、カーボンフェルトである。色々なアイテムがあるものだ。これをユニットに相対する面に少し入れてみる。するとどうだろう。見事にチューニングされ、ギターの音色も聴きやすくなった。さらに低音の締まり具合も変わってきた。普通のフェルトは低域まではコントロールしないが、カーボンフェルトは低域にも効くということだ。
最後に「D-3」の登場だ。成る程、モニター調の「長岡サウンド」的な、シャープでダイナミックな音を出してくれた。かなりトゥイーターが効いているようだ。試しにトゥイーターを外してみると、ガラリと表情は変化し、落ち着いた音ではあるが、やはり物足りない感じであった。ただ、オーナーでるkuma氏の好みは柔らかめの音なので、もう少し調整したいようだった。
ビールも皆いい加減進み、ジャズやクラシックばかりで、まったりしかかった時にいきなり私がニルヴァーナの「Nevermind」をかけて皆を驚かせたりと、そんなこんなで楽しい楽しい夜は更けていった。kumaさん、「Studio Messe」さん、そして参加者の皆さん、このような楽しい時間を本当にありがとうございました。
※今回の写真は「Studio Messe」の店長さんに提供していただきました。
58.ブルーの変身(01.8.16)
実は前から中古で手に入れていたのだ、FF165K。コーン紙の白さがやけに目立つ。
これをどう使おうかずっと考えていた。こいつはバスレフでも良し、バックロードでも良し、というタイプで、周波数特性を見ると低音があまり出ていないので、バックロードの方が向いているのかもしれない。ただ、16cmのバックロードを作るとなれば、かなりデカいものとなる。長岡鉄男先生の設計ならば、「スーパーレア」「D-37」があるが、これは限定ユニット用。他には「D-130(テンナンショウ)」という130cmの高さを持つ、スペースファクターに優れたものがある。しかし、はっきり言って、夏にバックロードを作る、というのは無理だ。暑すぎる。
ただ、バスレフにしても、この低音不足になりがちなユニットをバランス良く鳴らすのは結構大変そうだ。計算してみると、内容積は50リットルも必要となった。本当か。計算間違いではないか。
そんなわけで、全くもって「とりあえず」的ではあるが、現在パイオニアPE-16Mを搭載している「ブルー」に交換してみようということにした。しかし、これでうまく鳴るかどうかは分からない。「ブルー」の容積は約36リットル。まあ、そんなに悪くはなかろう。ダクト、というかポートは直径96mm、長さは30mm。どう考えてももっと長いほうが良かろう。どうするか。
そこで前から考えていた素晴らしい方法を実現に移すことにする。それは、「着脱自在ダクト」の製作である!素晴らしい。つまり、板に穴を開け、そこにダクトをくっつけて、そしてポートの穴を介してその板をはめ込むのだ。…などと自画自賛モードに入り込んでしまうところであったが、どうやってその板をバッフルに密着させるか。それが問題だ。何せ着脱自在と言うからには、接着してしまっては意味がないのだ。木ねじを使うか。それだと今までの「素」の状態で使うとき今一つだ。ベロクロ(マジックテープ)ではすき間だらけだし、弱すぎる。うーん、どうするか…
その時ナイスなアイデアがひらめいた。縛りつけてしまえばよいではないか。板を本体に括り付けてしまうわけだ。ヒモなんかで縛ってはあまりにも色気がない。ちょっと贅沢をしよう。と、言うわけでカーショップへ。カーステレオなんかを横目で睨みつつ、向ったのはキャリアー関連のコーナー。そこで探したのは結束用のベルト。キャリアに積載した荷物を縛る、あれである。これならきつく縛ることが可能だ。「THULE」のやつを購入し、その足で東急ハンズへ。板とダクトになるものを探しに行くのだ。
意外にハンズでもダクトになるものに苦労してしまった。最初塩ビパイプを求めたのだが、意外に種類が少なく、求める大きさ、長さがない。ぐるぐる回った後、結局紙管にする。本当は5cm以上の口径にしたかったのだが、それだと紙管自体の筒が薄いのだ。これではダクトにはひ弱すぎる。それならば板を使って角形ダクトを作ればいいだけである。結局、3.7cm口径の紙管にし、これに合わせて板に穴を開けてもらう。
さて、作業だが、今回はちょっと凝ってみる。口径のラウンド加工である。ま、たまには見栄えにこだわってみようかな、と。風きり音が低減されるので、音質的にも有利なのだ。ラウンド状の棒やすりで丁寧に口径部を磨いていく。そして目の細かいペーパーで仕上げる。うむ、こんな感じだろう。そして15cmに切った紙管を板に接着し、裏側にすき間テープをパッキンとして貼る。これでダクトは完成だ。
さあ、いよいよバッフルに装着だ。4mのやつを買ってしまったので、結束ベルトはやたら長い。切ろうかな。でも別の用途に使うかもしれないし…と、だらりと後ろに垂らしたまま、ぐいっと引っ張りながら何とか括り付けることに成功した。冷房を入れてはいるものの、もう汗まみれだ。
まだダクト板に色を塗っていないのでアンバランスだが、とりあえず完成だ。さて、音を出してみようか。その時別のスピーカーでたまたま鳴らしていたのはブランキージェットシティだった。いつものジャズっぽいやつとは違うがまあいいか。スピーカーを「ブルー」に切り替えてみる。そこで私が耳にしたものは…(続く)
59.続・ブルーの変身(01.8.22)
思わず耳を疑うほどだった。
「ブルー」から出てきたのはまさに、「悪」の音だったのだ。シャカシャカシャカシャカ…それまで鳴らしていた「すーぱーらわん」は、確かにハイ落ちのマイルドサウンド、それに耳が慣れていたとは言え、あまりにもハイ上がりのガシャガシャした音に飛び上がるほど驚愕してしまったのだ。いくらベンジーの声が刺激的なハイトーンとは言え、これはなかろう。
この「FF」系のユニットは、鳴らし始めはそういった音になるという。しかし、いくらブランクがあったとは言え、中古品である。綺麗なユニットだったのでもしかしたらあまり使っていないのかもしれないが、それにしてもなあ…
さすがにしばらく鳴らしていると落ち着いてきた。しかし、粗さは以前残っているし、何しろ低音がまるで出ていない。普段の試聴ソフトを色々かけてみるが、どれもこれも低音不足なのだ。まあ結論は一つ、「ダクトは失敗だった」ということだ。やはり口径が小さすぎたのだ。大体外見的にもあまりにもアンバランスではないか。「急いては事を仕損じる」とは、昔の人はやっぱり含蓄のあることを言うものだ。材料がないからと言って間に合わせで済ませてはいけないのである。
そこでせっかく汗にまみれて取り付けたダクトを外してみる。いきなり今まで中に溜まっていたものを吐き出すかのように低音が「ごーん」と出てきた。やはりこの方が良いのだ。
さてさて、結局ただユニットを取り換えただけとなったわけだが、やはりPE-16Mとはかなり音調が異なる。落ち着いた中にカラッとした陽性の音を鳴らしていた16Mだが、165Kの場合は少々暴れ者ながらも意外に暗い音を出しているのだ。「暗い」という言い方が適切かどうかは分からないが、ダクトの問題かもしれない。そこから出る低音は16Mのものより低い音が出ていると思う。しかし、その少し上の帯域、つまりは16Mが得意にしていた部分が弱いのだ。実際にf特でも計ってみたいところだが、その帯域にディップがあって、それが全体的に暗い音にしている要因ではないかという気がするのだ。
まあしかし、今更もう一つダクトを作り直す気にもなれないし、今現在出来る改善をしてみよう。高域の粗さが問題だ。ユニットの特性図を見ると、結構中高域から高域に掛けてかなり暴れた特性を示している。そして超高域はなく、いきなりストンと落ちる、というなかなか派手な動きをしているのだ。確かにスペック上も高域は17kHzまでとなっている。これは確かに粗いわ。手っ取り早い対策、として「すーぱーらわん」用の補正回路を入れてみた。するとどうだろう、今までちょっと我がままで野放図に鳴っていたものが、ちょっぴり分をわきまえた大人になったような、そういう鳴り方になった。ただ、「スパーン」とした超シャープな鳴り方は影を潜めたので、好みに因るかもしれない。しかし、自分としてはシャープな音は好きだが、シャープならばもう少しきめの細かい音で鳴って欲しいので、補正を入れるほうを採ることにしたい。
このユニットでこのエンクロージャーを使うには、ダクトの再製作も必須だが、箱自体の補強も必要な気がする。このユニットはもう少し頑丈な箱で鳴らしたほうが良い。するとやっぱり、箱の作り直しかなあ。絶対その方が良い、この箱はPE-16Mの方が合っている、とは思うんだけどねえ。でもしばらくこれで遊んでみたいのだ。
60.振動を制する者は(01.8.28)
そんなわけで、FF165Kを装着した新生「ブルー」で遊んでいる今日この頃なのだが、この「FF」シリーズに共通する弱点として、フレームが弱いことが挙げられる。マグネットは割と強力(特に125K)にも関わらず、フレームは薄っぺらい103や164とかと同じものなのだ。これはネジで強く締めるとたわんでしまうくらい弱い。それで安いことがメリットなのだが、さすがに心許ない。
「ブルー」に付ける前に多少の対策はした。フレームの裏には鉛テープを貼り付けて、デッドニングを施しているのだ。その効果は出ているのかどうかは分からないものの、やらないよりはマシだろう。
しかし、振動対策というのは本当に侮れない、ということはインシュレーターの交換などで強く実感している。やはり音は振動の一種なのだ。よって、振動をどうするかで音はより自分の好みへと近づいていくのだろう。
最近、盛んに取り上げられているアクセサリーとして制振素材合金「M2052」を使ったものがある。ネジや、ワッシャーといったものなのだが、これらを機器標準のネジと交換すると驚くべき音質改善が図られるという。本当だろうか。しかし、遂にカーオーディオの世界でパイオニア(つまりカロッツェリアだね)がハイエンド・カーオーディオである「X」シリーズでこの制振ネジを使用したということだ。マイナーなオーディオメーカーではなく、メジャーな会社が採用したことは驚きとも言える。こういった「本当はどうなのだろう?」と昔からのオーディオマニアから見たら眉をしかめたくなるようなものは、保守的な会社は例え本当に効果があることが分かっていても取り上げにくいものだ。まあ、若者が多いカーオーディオの世界だから、逆におかしな先入観がなくて良いのだろう。
さて、今回使ってみよう!と購入したのがワッシャーである。つまり、ユニットを留めているネジの間に挟むわけだ。当然今はごくごく普通のワッシャーが入っているのだが、それと交換するのだ。その「アブソーバーワッシャー」は8個セットで売っていたのでちょうどいい。いろいろな大きさがあるがネジに併せて4mm口径のものを選ぶ。ちょっと茶色が微妙に混じったチャコールグレー、といった色をしていて、確かにイメージ的にも「振動をぐっと抑える」という感じを醸し出している。これがキラキラしていたら「特有の音が付きまくるんじゃないか」と思ってしまうだろう。一緒に「ツゥーバーディスク」という、これはまあ、廃物利用と言うか、ワッシャーを作るときに真ん中を抜いた余りの部分を集めて製品化した、誠に合理的な商品なのだが、それを購入した。小さな金属チップなので、色々なところに貼り付けて試すことが出来るだろう。
ワッシャーの交換は特別難しいものはない。コーン紙を突き破らないように慎重にドライバーを回して締めつけるだけだ。先端の尖った木ネジも制振シリーズにあれば良いのに、と思いながらドライバーを回す。さて音出しだ。
実際にはおまじない程度にしか考えていなかったことは確かだ。しかし、そこから出てきた音はそんな軽い気分など吹き飛ばしてしまった。
音がくっきりした。
何か、暴れ馬を有能な騎手がしっかり手綱を引いてコントロールしているような。
そして、音自身に筋肉がついたような感覚。ボディビルダーのそれではなく、マラソン選手を思わせる引き締まったものだ。
いや、びっくりした。これは優れ物である。特に弱いフレームだからこそ、効果を発揮しやすかったのかもしれないが、他のスピーカーにも是非試してみたいものだ。さしあたっては、「ツゥーバーディスク」の方の使い方を考えてみようと思う。
61.置物から攻めてみる(01.9.9)
実力派業務用CDレコーダー「CDR1000」。しかしこいつはX-1などと比べると筐体はかなりヤワだ。X-1のように上に真空管アンプなど載せようものならばたちまち潰れてしまうだろう。足などただのゴム足である。逆に、これを替えるだけでさらに良い音を鳴らしてくれるのではないか。
そんなわけで東急ハンズで買ってきたのは黒檀のウッドブロック4個。1個\100と、試してみるには懐も痛まないものだ。これを筐体に直接あてがってみる。足の下では効果も薄れるし、余りに背が高くなってしまうのだ。
直接あてがっても何か違和感のあるスタイリングとなってしまったが、まあとりあえずセッティングは完成だ。見た目を重視すればブロックよりも円柱の方が良いだろう。さて最近のリファレンス「ルパン-ジャズ」をかけてみる。
…おお、これは思った以上の違いが出て驚いた。これまでも締まりのあるベース音は特徴的だったのだが、一層締まり、奥行きも前方への展開も幅広く出るようになったのだ。ピアノのアタックも力強い。これはコストパフォーマンス全開と言って良かろう。
ただ、この黒檀という最も重くて硬い部類に属する木の属性がもろに出ており、音の方も少々堅過ぎの感もなくはない。色気が少々減退したような感じだ。ただ、全体的なパフォーマンスは明らかに上がったことは確かだ。
次に試してみたのがオーディオテクニカのインシュレータ「AT6099」。ゴムとソルボセインと真鍮を幾層にも重ねたハイブリッドタイプだ。価格は6個で¥4000と、まあまあのものだろう。使うのは3個にして、また筐体に直接あてがう。ゴム系を表面は使っているので黒檀の時のように滑らないのは良いことだ。さて音出し。
ふむ、やはり潤いが出てきた。やはりゴム系の利点が出てきたのか、柔らかな感じだ。オリジナルの普通のゴム足に比べれば随分締まった感じになっているし、さすがに考えて作られている。欲を言えばもう少し金属である真鍮の音が出てくれても良さそうなものだが、ちょっとゴムあるいはソルボセインの効果が強い気がする。それでも潤いのあるこいつでしばらく使ってみよう。
そして後日、もう2個黒檀を買い足してスピーカー「ブルー」の下に、これまでのテクニカ・コインインシュレータの代わりにあてがってみる。きつさが少し軽減され、生き生きとした表情を見せるようになった。違いは僅かだがコインの癖っぽさがなくなったことは確かだ。
まだまだ色々な可能性を探ることが出来るのがインシュレーターだ。例えば今回は「CDR1000」にあてがっているテクニカを今度はスピーカーに持ってくるとどうなるか。さらにスピーカーから外したコインをCDR1000へと…などなど、無限の組み合わせがあるのだ。これもケーブル関係に次ぐ、オーディオのちょっとした愉しみの一つだろう。今はすぐに汗をかいて床がシミだらけになってしまうので、もう少し涼しくなったらまたやって見ようと思う。
62.リターンマッチ(01.9.16)
まだ私はあきらめたわけではなかったのだ。
新生「ブルー」のバスレフダクトである。前回余りにも口径の小さいダクトを作ってしまって見事に失敗してしまったのだが、なあに、また大きめの口径のを作ればいいのだ。
今回は塩ビパイプを予めホームセンターで手に入れた。75mm口径なので、大きさに不足はないだろう。これを10cmの長さに切る。するとダクトの共振周波数が計算上は大体50Hzになるはずだ。このFF165Kというユニット、なかなか低音が出にくく、実際はバックロードの方が合うのだが、そうするとフレームが弱いなどの弱点が際立ってくるという難物なのだ。普通のバスレフでは力を発揮しきれないのかもしれないが、まあとにかく暫くはこのエンクロジャーで頑張ってみよう。
また前回同様東急ハンズでシナ合板を購入、違うのは穴の大きさだけだ。またしてもポートの開口部はやすりでラウンド仕上にする。そして塩ビパイプをエポキシで接着する。あっさり「着脱式バスレフダクト Ver.2」は完成する。エンクロジャーに装着、ベルトでガッチリ固定する。この時点で当然のことながら汗まみれだ。テーブルタップなどが近くにあるので、結構ドキドキものである。何故もう少し涼しくなるまで待てないのか…まあいいや。良い汗をかいているのだ。オーディオはスポーツなのだ。さあさあ音出しだ。
…さすがに以前のような「全然低音出とらんがや(名古屋弁)」ということはない。ダクト無しの状態に比べると下の方が伸びていることは間違いない。「うーん、こんなもんかなあ」という感じで他のソフトを次々とかけてみる。決して悪くはないが、あまり感動はない。スピーカーを他の、D105や「すーぱーらわん」に替えてみる。…この2機の方がどう考えてもいい。つまりは、「ダクト付きブルー」は美味しい部分が出ていないのだ。引っ込んでしまった帯域があるのだろう。うーん、残念。まあ、これはこれで引き締まった低域と、きらびやかな高域で独特の面白さはあるのだが、あまりにハイ上がりか。
とりあえずこの状態で次の週まで引っ張ったのだが、敢え無く撤収することにした。ダクトを外すと、大味だが美味しい低音がまろび出てくる。「やっぱりこれかな」と、元を辿れば口径の数字を間違えてしまって出来たこのポートが、ずっと結果オーライを引き起こしているのだ。何か皮肉なものだ。一体おれのかいた汗は何だったのか…しかしまあ良いか、この音が好きだし。ユニットも慣れてほぐれてきたようだし、制振ワッシャー(現在はターミナルのネジにも使っている)の効果で、全体的に引き締まってきた。高域もうるささが減少し、もうシンバルやブラッシュの音はこれでなければ駄目だ、という域まで来た。クラシックを聴かなければ結構良いスピーカーになったと思う。後はこの低域のちょっとしたモヤつき、これはもはや、このポートの大きさのままダクトを着けるしかないのだろう。結局「着脱ダクト計画」は失敗なのかあ。うーん…
63.やはり調整ならばここから(01.9.30)
「着脱ダクト計画」をどうするか。もっと太い塩ビパイプを探して作るか、それとも…
というわけでやはり自分の得意分野(?)で行くことにしよう。すなわちケーブルである。スピーカーケーブルの交換でもう少し低域を調整してみよう、というわけだ。うーん、自分らしい。しかも、やっと秋らしく涼しくなってきた。もう汗もかくまい。
さて問題はどうしたいか、である。
現状ではまだまだハイ上がりで低域不足を感じる。高域をほんの少し抑えて、低域を持ち上げるようなケーブルが必要になってくるわけだ。真っ先に思い浮かぶのがベルデンの「727」なのだが、これは極端なケーブルで、だぶだぶの低域と、大人しすぎる高域、という結果を招きがちである。別のものにしたい。と言うか、とにかく別のケーブルを試してみたいという気持ちの方が強いことは電線病である私にとって自明のことだ。
そこでまた大須へ向かい、色々見るのだが、なかなか「これ!」というものがない。考えてみると、最近の新しいケーブルはどれも「高解像度、伸び切った高域」というタイプのものが目立つのだ。人気のS/Aラボ(使ってみたいが今回の趣旨には反してしまう)などもそういうタイプである。「ゴリンとしたベース」を求めるタイプは今や少数派なのだろうか。
「ハイファイ堂」でいつも物色する「中古ケーブル」が無造作に詰まった段ボール箱の中を物色していると、ヴァン・デン・ハルの太い奴、「352」が見つかった。ちょうど2m×2という長さもバッチリである。試聴させてくれるというのでその場で聴いてみた。とは言え、その時の試聴機器はスピーカーはJBLの5500(新品価格は物凄く高い)、アルケミストのプリ+パワー(何かやたらゴージャス)、というハイエンドなもの。参考になるのだろうか…という懸念も。まず標準でその時鳴らしていたカルダスのケーブルの状態を聴いてから付け替えて試聴。
意外に変わるものだ。カルダスだとちょっとキツい音かな、という感じだったのが、まろやかになり、低重心になった。やはり中低域寄りの音なのだろう。ただ少々ぼやけた、と言うか解像度とか透明感と言ったものは後退した。もっとも、この中古ケーブル、端末処理にアダプターをつけていた。太いケーブルなので、きっとターミナルが小さかったのだろう。これが音にかなり影響を与えていることは間違いない。真の実力はもっと高いはず。そう踏んだ私は購入を決めたのだった。
さて持ち帰った私は早速アダプターの根元から切り取り、端末処理をする。出てきた芯線は銀色をしていた。最近の8Nとか何とかいった銅線の素材競争からは無縁の、昔ながらの錫メッキ線なのだろう。その点ではベルデンに似ている。ただヴァン・デン・ハルはオランダ(だったっけ?)というヨーロッパであることが意味なく期待させてくれる。
スピーカー側は例のPADのバナナプラグに、アンプ側は裸線のまま繋ぐ。しかし、これが一苦労だった。どでかいターミナルを持つアキュフェーズであっても、このケーブルの太さには辟易してしまったのだ。やはりバナナプラグ対応のターミナルの方が使いやすい、と思いつつ何とか押し込んでつまみを回したりしていたら、結局気が付くと大汗をかいており、床には大きなシミが。やれやれ。やっぱりか。冬でないと駄目らしい。
さて、べっとりと汗をしみ込ませたTシャツを脱ぎ捨てて試聴だ。いつもの「ルパン」から。
…ふむふむ、やはり中低域寄りのキャラクターが出たぞ。これまで足りなかった低域が出てくるようになったのだ。そしてちょっとキツかった高域も僅かに大人しくなった。ピアノのタッチも濃厚で気持ちが良い。店頭でのように「音がぼけたり」はしていない。まさに願ったり叶ったりである。思わずほくそ笑む上半身裸の私。
それにしてもケーブル一本でこんなに音の傾向が変わっていいのだろうか、と思いつつも、しばらくソフトを取っ換え引っ換え、そうして日も暮れていくのであった。