ブラックホークは、セントウルSから始動することになった。 あの安田記念の日は、まだ3月ほど前のことである。 彼のレースの前に、こんな不安な気持ちになったのは、初めてだった。 それほどまでに、安田記念のパドックで逢った彼は元気がなかったのだ。 あの時、私は全てが全く違ってしまったブラックホークをみて、つらくて苦しくて 仕方がなかった。既に馬券は売れてしまっていたけれど、 彼が人気を大きく裏切るであろうことは、悲しいことに想像のとおりだった。 今まで、ある時から急に、パタリと走らなくなってしまう外国産馬たちを たくさん見てきた。彼もそうなのか・・・。
「次走以降、体が回復しても、全く走る気を無くしてしまっていたら どうしよう。」
考えただけで恐くて恐くて仕方なかった。 きっと今回も彼は人気になる。 夏を越しても陣営のトーンは上がってこない。 「歳のせいか落ち着いてきている」ブラックホークに 厩舎関係者も戸惑っているのだ。 パドックに彼が現れるのをを待つ間、それこそ、祈るような気持ちだった。