「あの頃と同じで・・・」

1999年スプリンターズS〜1


ブラックホーク(1999/12/19atスプリンターズS)  月曜日の朝、電話が鳴った。布団から体を起こして嫌々受話器をとった。 彼の声だった。興奮しているようだ。

 「あのね、競馬ブックのスプリンターズSの二週前登録を見たらね、 ブラックホークの鞍上がノリになってたよ。」

 「あぁ、そう。ありがとうね。」とだけ言って電話を切った。
 私の中ではまだ、休みの日の寝坊を起こされたことの方が重要だった。 また、布団をかぶった。目を閉じてさっきの電話の内容を思い返していた。 バクバクバクと、心臓の音が聞こえて、私の頭はフル回転しはじめた。 あぁ、夢にまで見たことが今、現実になろうとしている。

 あの男が彼の背に帰ってきたのだ!

スポーツ新聞を手に入れると、ノリちゃんが
「ずっと見てたけどあの馬はGIでは、スプリンターです。 僕、空いてます。」
と国枝調教師に自分からアプローチした話が載っていた。

 ノリちゃんがずっとブラックホークのことを気にしていてくれたことがわかって 私はそれだけでも嬉しかった。その上、「まかせて下さい」と大見得をきったらしい。 マイルCSでエアジハードに完敗して、がっかりしたのは私だけじゃない。 厩舎関係者や馬主さんは私の何千倍もショックだったろう。 ノリちゃんの言葉はあまりにあっけらかんとしていて、私も少し元気になれた。 調教師さんのコメントが少し明るく感じたのも、彼の言葉に勇気づけられてのものかもしれない などと想像してみた。

 一番人気は間違いなく、前哨戦CBC賞を制したアグネスワールド。 スピード豊かなアグネスの作るペースで、アグネスを見ながら競馬できるのは、とても有利。 アグネスワールドをゴール前差す競馬ができれば、今まで課題となっていた「早め先頭〜たれる」 こともない。無事に出てくることができれば可能性は十分にある。


まだまだ続きます