香港旅行の疲れも癒えぬまま、スプリンターズSの当日を迎えた。 無事に横断幕も張り、あとは待つだけ。たった1分と少しのレースを寒空の下、ずっと待つ。 今までのブラックホークのレースを思い出す時間はたっぷりあった。 「今度こそ、今度こそ」と強く思うたびに、私は歯をくいしばっていたようだ。 気がつくと、顎が疲れて少し頭痛がしていた。
9Rのひいらぎ賞では近親ブラックホークのマルターズホークというなかなか かっこいい馬が武豊で勝った。これは、ブラックホークが勝つという暗示なのか、 それとも武豊が勝つという暗示なのか。いつも以上に余計な事を考えて、いろんなことにナーバスになっていた。
スプリンターズSのパドック周回がはじまった。アグネスワールドもマイネルラヴも よく見えるのに、ブラックホークはどうしたことだろう。マイルCSの時とは何かが違う。 陽のせいだろうか。やはり夏から使いづめで体調は下り坂なんだろうか。 冬場だから毛づやが多少落ちるのは許容範囲なのだろうか。体重が10Kgも増えてる。パドックを見て不安になってしまった。
ただ一つ、良いと思えるのは、パドックで落ち着きがないこと。 5歳時の彼はこうだった。大きな子どもみたいで、そういうところを私は好きになった。 復帰してからの彼は、普通にパドックをまわる馬になっていた。 あの頃の空気、あの頃の鞍上。私が好きになったブラックホークが帰ってきたのだと、思いたい。