マット・シューリエンのアドバイス

A Summary of Matt's Advice on Magic

 

 

1999/11/8

シカゴで活躍した伝説的バー・マジシャン、マット・シューリエン (Matt Schulien)の言葉を紹介します。マジック、特にカードマジックなどを演じるときのアドバイスです。 アドバイスの中には、酒場という特殊な状況でこそ威力を発揮するものもありますが、大半は、どのようなマジックにも当てはまることです。

1.「ミスディレクション」の重要性

これはジョン・ラムゼイが言っていることとほとんど同じですので、省略します。ひとつ付け足すのなら、「観客が驚いたり、笑ったりしているときが、ミスディレクションとしては一番よいときである」というのは知っておいてよいでしょう。

ある現象が起きて、観客が驚いている瞬間、そのとき観客の視線や意識は、テーブルの上や、品物に向いています。このときが、何かをこっそり処理したり、スティールしてくるには一番よいタイミングです。このことは、ある程度マジックをやっている人であれば自ずと気づくことですが、その瞬間、どの程度まで大胆なことができるのかは、何度かやっているうちにわかってきます。どうしてもある程度の経験が必要です。このあたりのことがうまく使えるようになると、ポケットから何かを堂々と取り出しても、観客はまったく気づかないものです。

2.「フォース」と「スティール」はカードマジックでは重宝する

大抵のバー・マジシャンは「フォース」を多用します。1時間くらいのショーの中で、カードマジックを10くらい見せる場合、その半分以上は「テイク・ワン」(観客に1枚トランプを取ってもらい当てるタイプ)であることが珍しくありません。さらに、これらの大半にフォースを使っています。

バーのような場にはひどい酔客もいます。行儀の悪い客もいます。1枚取ってもらい、覚えてもらったあと、普通はマジシャンがそのカード受取り、残りのトランプの中に差し込んで、切り混ぜます。しかし、中にはマジシャンから残りのトランプも全部取り上げ、自分勝手に差し込んで、好きなだけ切り混ぜて、それで「当ててみろ」と言ってくる挑戦的な観客も少なくありません。このようなとき、そのカードがフォースしたものであるのなら、まったく平気です。どうにでも処理できます。このような場合に備えて、バー・マジシャンはフォースを保険のつもりで、頻繁に使います。フォースする必要のないものでも、「クラシック・フォース」の練習のつもりで、普段から意識して使うのは悪くないでしょう。

「スティール」というのは、観客のカードをこっそり抜き出すテクニックです。 スティールしてしまえば、客がどれだけカードをシャッフルしても、返してもらってからアディションするか、思いも寄らない場所から出現させたりできます。

3.完璧な技法を望むな

完璧な技法を望むより、ミスディレクションでカバーすることを学べと言っています。

たとえば、「カードをパームする」秘訣は、観客に話しかけるか、観客の顔を見て、観客の視線が術者の手元からはずれた瞬間に行うことです。これはミスディレクションの基本中の基本ですが、このようなことすら、アマチュアマジシャンの場合、99%の人は、やっていません。これは知識として知っているだけでは役に立ちません。普段から意識的に、この部分では観客に話しかけながらやるということを、事前に練習しておかないとできるものでありません。ぜひこれからは、練習の段階から意識してください。

マックス・マリニもパームやパスを行うタイミングを見計らって、客の視線が自分の手元からはずれるのを辛抱強く待ちました。だからこそ、彼の演じるものは魔法のように見えたのです。

4.マジックは生き物

マジックは、観客相手に実際にやってみることでしか身につけることはできません。特に「タイミング」や「ミスディレクション」という、マジックにとって不可欠であり、最も重要なことほど、「生」の観客を相手にして、実際にやってみることでしか修得できません。

5.観客の雰囲気をつかまえる技術を身につけよ

自分の前にいる観客がどのようなタイプの人なのか、それを早く察知することも大切です。挑戦的な観客だと思ったら、相手がどのような無理難題を言ってきても大丈夫なトリックを準備しておくことです。理不尽な要求にも困らないトリックを持っておくことも、プロとしてやって行くには不可欠な準備です。アマチュアの場合、あまりにも挑戦的な客だと思えば、さっさとやめてしまったほうが賢明です。マジックで勝負をしても何にもなりません。性格が悪くなるだけです。

では実際にどうやればよいのかは、「ラウンド・テーブル」に書いているものを読んで研究してください。 どれというのではなく、全部読んでください。どこかにヒントくらいはあるでしょう(笑)。

うるさい客には「サカー・トリック」も有効です。つまり、一度マジシャンが失敗したように見せておいて、実際はどんでん返しがあるというトリックです。

6.観客を自由にコントロールできるようになれ

つねにマジシャンが観客に対して主導権を握り、観客に、マジシャンをコントロールさせてはいけません。

しかし、これはそう簡単ではないでしょう。これができるかどうかが、プロとアマの差かも知れません。アマチュアでも、上級レベルの人はこのあたりがうまいのです。初心者がマジックを行うと、観客に振り回されてしまうのは、自分がその場をコントロールできないからです。これができるようになると、道具類に勝手に手を出してきたりしなくなります。

7.誰かがマジックを見せて欲しいと言ってくるまで、自分からはマジックを見せましょうかと言ってはならない

これもチャーリー・ミラーをはじめ、多くのプロが言っていることです。初級から中級レベルに移る時期くらいの人は見せたくて仕方がないのですが、そこを我慢することです。

特にバーやレストランでマジックを見せる場合のアドバイスとして、食事をしたり、人が話に花を咲かせているときは、そのような場に割り込むことは厳禁だと警告しています。

8.いつやめるべきかを知れ!

観客がもっと見たいと思っているときにやめるようにすることです。これはとても重要なことです。たったひとつ余計に見せたために、それまでの雰囲気が台無しになることほど、惜しいことはありません。

これを避ける具体的で実践的なアドバイスが、私が繰り返し言っていること、「ひとつだけ見せて、そこでやめる」ということです。ひとつだけでやめておけば、見せすぎによる失敗はなくせます。

9.マジックをすることが好きになること

マジックをやるとき、せめて、自分が演じるマジックくらいは好きになってください。自分がそのマジックが好きで、それを大切にしているのなら、それは自ずと観客にも伝わります。もし観客がマジックで感動してくれることがあるのなら、そのようなことかも知れません。マジシャンが手垢の付いた道具を使い、何の感動もなく、手だけを動かしている限り、観客も感動などしてくれません。

魔法都市の住人 マジェイア


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