My Favorite Tricks

Fred Kaps 特集9

Three Balls Transposition

Three Balls
1997/12/5

最初に

このトリックはエドウィン・サキ(Edwin T. Sachs :?−1910年)の名著"SLEIGHT OF HAND"に解説されたのが初めてだと思います。中国から来た手品師にサキが見せてもらったマジックの中で、これが唯一、興味を引いたものだったそうです。

ダイ・ヴァーノンはサキの"SLEIGHT OF HAND"を名著としてよく推奨していましたから、ヴァーノン自身、この本でこのトリックをマスターしたのかも知れません。

"VERNON BOOK"の中に解説されている"THREE BALLS TRANSPOSITION"は、大変ディセプティブで、よくできた手順なのですが、今から見ると少々長すぎます。全部で6段からなっています。カップスはこれを半分の3段で演じています。
現象としては、ボールの移動だけですので、長くなると単調になってしまい、観客も退屈してきます。

なお、上の写真のボールは3色ですが、実際には3個とも同色のボールを使います。画像として、3個とも真っ黒だとあまりきれいではないので、私が勝手に3色にしただけですので、気にしないでください。(笑) 3色でこのトリックを演じるルーティンもないことはないのですが、それはオリジナルを知っている人を引っかけるためのマニア用で、あまり意味がありません。

現象

観客二人に手伝ってもらいます。ハンカチを広げ、四隅を持ってもらい、即席のテーブルとして使います。
マジシャンはポケットから直径2センチほどのボールを3個取り出し、広げてもらったハンカチの上にボールを置きます。

第1段:左手でこぶしを作り、1個のボールをこぶしの上に置きます。ボールを静かに手の中に沈めて行きます。
2個目、3個目も同じように左手の中に入れます。両手を20センチほど離して、両方の親指を回すと左手に入れたボールが、右手から1個出てきます。2個目、3個目も同じように右手から出てきます。勿論、左手にはボールはありません。

第2段:同じように2個のボールを左手のこぶしの中に入れます。3個目はポケットに仕舞います。今、左手には2個しか残っていないはずなのに、3個のボールが出てきます。

第3段:2段目と同じように2個を左手の中に入れ、3個目はポケットの中に入れます。

観客に、「左手にはボールがいくつあると思いますか?」とたずね、観客が何と答えようとも、手を開くと、本物の鶏の卵が現れます。

コメント

このマジックはクラシックになっていますが、その割には誰かが実際に演じているのを見たことはほとんどありません。今回、カップスがやっているのを見ると、決して悪くありません。3段くらいで、クライマックスまで持って行くのがやはり良いと思います。

最後の終わり方は、卵やジャガイモといった、ボールとは全然違う材質のもので、ある程度大きなものを出して終わる場合と、3個のボールを完全に消してしまって終わる演じ方があります。どちらも大変効果的です。

また、これに使うボールは様々なものが使われています。大きさも直径1センチ程度から2.5センチくらいまで色々です。日本人の手には1.5センチくらいのものが良いでしょう。
素材は固いゴムのものがあれば使いよいと思います。他のボールとぶつかっても音がしないのと、パームがしやすいからです。「スーパーボール」という商品名でよく弾むボールがありますが、これでもし適当な大きさのものが見つかれば使いやすいと思います。

即席風に見せるのであれば、木の実を使ってもよいでしょう。昔、中国で演じられていたときは小石や木の実を使っていたものかも知れません。

現在、私が使っているボールはコンピュータのマウス用ボールです。(笑)上の写真もそうです。最近、マウスのボールだけ販売されていたり、マウスを購入すると予備のボールがついてきたりします。2年ほど前、アスキーから『マウスの球』(2,400円)という名前で、黒いボールが6個入ったものが書店で販売されていました。私はこのセットを使っています。日本人の手にはマウスのボールが丁度具合よい大きさなのです。さらに、表面が艶消しのゴムでコーティングされていますので、滑らず音もせず、使い勝手がよいのです。ただ、このアスキーのセットは、外見はどれも黒で同じように見えるのですが、少しずつ重さを変えてあります。しかし、カップスの手順を演じるのなら、あまり気になりません。

このマジックの際、観客にハンカチを広げてもらうのは、どこでも立ったままで演じることができるようにという意味です。人が集まっているような場所で、突然何かを見せなくてはならないときでも、ハンカチをテーブル代わりにすればできますから、確かに便利です。しかし、適当なテーブルがあるのなら無理にハンカチの上でする必要はありません。

また、カップスもそうですが、このマジックを演じるとき、ハンカチの代わりにネットを使っているマジシャンがいます。これはボールが転がって落ちるのを防いだり、下からでも(?)見えるようにという配慮からかもしれませんが、ハンカチで十分です。

最後に一言

もっと詳しく研究したいのであれば、Frank Garciaが1978年に"THE REAL SECRETS OF THE THREE- BALL ROUINES"という本を出していますので、お読みください。(当時$12.50) ホロウィッツやダレーの手順、小さくて固いボール(真珠)で演じる見せ方なども解説しています。

魔法都市の住人 マジェイア

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