My Favorite Tricks

Fred Kaps 特集12

The Sidewalk Shuffle

sidewalk shuffle
1997/12/11

最初に

ステージでも実演可能なカードマジックです。これに使うトランプは大きさがA4くらいあります。これを4枚だけ使用します。

 ところで、この「サイドウォーク・シャッフル」には歴史があります。サイドウォーク・シャッフルが発表される数年前(1972年頃)、Joe Ridingが、”THE ONLY THREE CARD TRICK IN THE WORLD --- USING --- FOUR CARDS”という長い名前のカードマジックを発表しました。これが原案です。

 この原案自体、大変な傑作です。フレッド・カップスもサイドウォークシャッフルが発表されるまでの数年間、これを演じていました。高木先生も、「世界のカードマジックベスト12」の中に入れておられたくらいです。

 1974年頃、マーティン・ルイスが特殊なネタカードを使うことで、さらに不思議に見えるようにしたのがこのサイドウォークシャッフルです。途中のあらためや、最後のクライマックスが一層鮮やかになりました。

現象

マジシャンはステージに4枚の大きなトランプを持って出てきます。1枚はクラブのエースですが、残りの3枚の表には何も印刷してありません。真っ白です。この4枚だけを使います。

 アメリカなどでは街頭で実際に時々見かけるのですが、トランプを使った簡単なギャンブルがあります。ルールはきわめて単純です。3枚のトランプで、裏向きのままカードを混ぜて、クラブのエースの場所を当てることができたら賭けた金額の2倍を払い戻してくれるという、何とも単純なものです。
しかし実際にやってみるとなかなか当たりません。当然です。これには様々いかさまのテクニックがあり、客は絶対に当てることができないようになっています。それを再現してみせるというストーリーで、カップスは演じています。

まず3枚の”はずれ”のカードである白いトランプを見やすくするために、隅にクレヨンで赤いバツ印をつけます。これでエースとのコントラストがはっきりしてわかりやすくなりました。全部で4枚ありますが、一般にはこの種のギャンブルは「スリーカードモンテ」とも言われているように、3枚でやるのが普通です。そのため、バツ印をつけた1枚を取り除き、テーブルの上に伏せて置いておきます。

第1段

2枚のバツ印のカードの間に、エースを挟み、はっきりと観客に見せます。3枚を裏向きにして、軽く切り混ぜます。エースは真ん中にあるような気がしますが,見るとはずれです。実はどこにお金を賭けられても大丈夫なように、こっそりテーブルの上のバツ印のカードとエースをすり替えてしまっていたのです。手に持っている3枚の中にはエースはありません。最初に脇に取り除いておいたカードがエースになっています。

第2段

 もう一度同じことをします。つまり1枚のバツ印をテーブルの上に置き、2枚のバツ印の間にエースが挟まっていることをしっかり確認してもらいます。間違いなくエースは真ん中にあります。裏向きにして3枚を混ぜると、またエースは消えてしまって、テーブルの上のカードがエースになっています。

第3段

また同じようにやるのですが、今度は、客もテーブルのトランプが怪しいと思い、そこにお金を賭けます。ところがテーブルの上の1枚を表向きにすると、それはバツ印です。手に持っている3枚を見ると3枚はすべてクラブのエースで、バツ印はテーブルの一枚しかありません。

コメント

 カップスも、マーティン・ルイスのこのやり方が気に入り、1974年頃からはこれに切り替えました。白い大きなトランプに、観客の目の前でクレヨンを使い、大きくバツ印をつけるというアイディアは説得力を増すと同時に、最後のクライマックスを一段と不思議にしています。

 実際にはクレヨンを使うより、女性の口紅を使った方が書きやすいので、口紅を使うことをおすすめします。これがケン・ブルックの店から売り出されたときの商品は、トランプにはプラスチックコーティングがされていました。そのため、終わってから表面をティッシュでふけば簡単に口紅を取り除くことができました。

 日本でこれのコピー商品が出たとき、普通のジャンボカードで作ったものを売り出していましたが、あれではダメです。トランプはA4くらいの大きさがあったほうが見やすいのと、プラスチックコーティングがないとクレヨンや口紅の色が残るため、よくありません。

最後に一言

 このトリックに対するコメントではないのですが、ヴァーノンがカップスに言ったアドバイスがあります。それは、観客に向かって、「トランプはどこにあると思いますか?」とたずねるのは良くないと言っているのです。おそらく、一般的な「スリカードモンテ」でも見せているときに言ったアドバイスだろうと思いますが、カップスはこのアドバイスを後々までよく覚えており、これを演じるとき実践したそうです。

 確かにこの種の質問をすると、見ている観客を狼狽させ、疲れさせます。観客に直接たずねるのではなく、マジシャンが演出の中で、自分でエースらしいと思われているトランプを選んで見せた方がよいのです。

 私自身、この「サイドウォークシャッフル」は好きで、これまでにも何度も演じてきました。数名の観客から結婚式などのような、100名前後の観客がいる場所でも十分見えます。これは4枚のトランプだけですみますので、何かの集まりで、マジックを見せて欲しいと言われそうな場合、これを持って行くことにしています。大きさこそA4程度ですが、薄いので、アタッシュケースにでも入れておけば、かさばらないので重宝しています。

 

魔法都市の住人 マジェイア

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