「脱出するコイン」解説

 

1999/6/30


★準備

最初にお断りしますが、これは一人では出来ません。助手になってくれる人が必要です。しかも実際にこのマジックをやるのは助手であって、マジシャンはほとんど何もする必要はありません。(笑)助手がすべてやってくれます。そのため、このマジックをやるときは、信用できる人に、事前に頼んで、何回か練習しておく必要があります。時間にして30分くらいは練習してください。それと、絶対に、誰にもタネを言わないように約束してもらう必要があります。それが守れないよう人には最初から頼まないでください。

★解説

1.観客が席に着いて食事をしているところでも、立食パーティのような場所でもかまいません。これを演じるとき、助手の人があなたの席の隣にいることが一番良いのですが、みんなが立っているような場所であれば、こちらから助手のところに近づいて行けばよいでしょう。

2.誰かにコインを一枚貸してくれるように頼みます。コインを取り出している間に、マジシャンはポケットからハンカチと紐を出し、テーブルの上に置くか、そばにいる観客に渡して、しばらく持っていてもらいます。

3.コインが準備できたら、それを左手の指先に持ち、他の観客にもはっきりと見えるように指先に持ちます。ここはゆっくりと、数名の人に確認してもらってください。

4.テーブルの上から右手でハンカチを取り上げ、左手の上にハンカチをすっぽりかぶせてしまいます。このかぶせる動作もゆっくりと、怪しげなところのないようにします。この状態で、もう一度、コインが指先にあることを確認してもらうため、観客、数名にハンカチの中に手を入れ、コインが指先にあるかどうか触ってもらいます。ハンカチをめくるのではなく、観客自身にハンカチの中に手を入れてもらい、触ってもらって、確認してもらいます。

「ありますね?」、とたずねれば、「はい」と答えてくれます。

これを2,3人にやります。

5.最後に、事前に打ち合わせしてあった助手のところに行きます。この人にも同じように確認してもらうのですが、ここで秘密の動作をししてもらいます。指先にあるコインを確認する動作で、実際には助手の人は、コインを自分の指先に取り、何食わぬ顔でハンカチから手を出します。つまり、この助手があなたの指先のコインを取り除いてくれるのです。これがこのマジックのタネであり、一番難しいところです。実際には全然難しくないのですが、マジックになれていない人にとっては、いくつかミスを犯します。それは後でまとめて補足します。

とにかく、助手がコインを抜き出したとします。観客は誰一人、動作を確認している人が、まさかコインを取ったなどとは思っていませんから、決してあわてたりせず、堂々と振る舞ってください。

6.もう一人別の観客のところに行き、紐を渡して手首をハンカチの上からくくってもらいます。紐でしばるとき、左手は握ってしまいます。

この状態までなったら、大きな会場でやっているのでしたら舞台の中央まで戻ります。数名のパーティ程度でしたら、その場でもかまいません。

実際にはもうすべて仕事は終わっています。後はいかにもったいを付けて、コインが消えたことを見せるかです。

7.左手を観客のほうに見せ、この状態でコインを抜き出すことは不可能であることを確認してもらった後、右手でおまじないをかける動作をします。

8.観客の一人に紐をほどいてもらい、ハンカチも取り除いてもらいます。握っている左手をゆっくりと開いて、手の裏表もゆっくりと観客に見せます。左手を開くとき、右手で、左手の袖を少し引っ張ってあげてもよいでしょう。袖の中に隠していないことを暗に示すためです。

9.10円玉や100円玉なら、このまま消して終わってもよいのですが、後で、返してくれと言われるのがうるさいのなら、出してもかまいません。借りているものが指輪でしたら出さないわけに行きませんので、出す方法も解説しておきます。

10.(取り出す方法)完全に消えたことを確認してもらい、ハンカチもよく調べてもらいます。袖もまくって、左手が完全にからなことを示した後、左手を広げたままハンカチを上から掛けてもらいます。今度は、ハンカチの下で手は握りません。開いたままです。

11.観客の誰かにハンカチの下に手を入れもらい、手の上にはまだ何もないことを確認してもらいます。次の人にも確認してもらいます。そして最後に確認してもらう人が助手です。この人は指先にコインを持っているのですが、ハンカチの下で、そのコインをマジシャンの手のひらに置いてもらいます。置いたら、何もなかったような風に、うなずいてもらいます。

別の観客の前に行くとき、左手を軽く握ります。観客にハンカチを取り除いてもらいます。マジシャンはゆっくりと左手を開くと、コインがまた再び出現しています。

いくつかの注意点

補足:このマジックは、秘密の動作をしているのは助手です。この人がまずいとばれてしまいます。実際は難しくないのですが、普通の人はこのような役をやったことがないので、異常なくらい緊張します。できるだけふだんと変わらないようにすることが大切です。

前半のポイント、コインをマジシャンの手から取り除くとき、大抵の人があわてて手を引っ込めますが、そのようなことをする必要はありません。

まず、何度か、コインをマジシャンの手から取らずに、他の観客と同じように、コインを触って確認して、そのままハンカチの下から手を出すという動作をしてみることが必要です。ここで、ハンカチから手を出すときの速度や視線などを確認します。ハンカチから手を出した後の手の格好や、出した後、手がどこに行くかを何度かやってみて、確認します。この動作は、「指先に鳥を見る」で紹介したことです。まず、何もせずに、普通の動作を何度かやってみて、そのときの動作を覚えることが重要なのです。

このマジックを始めて演じるときは、助手の人はテーブルの前に座っている状態がよいでしょう。そうすると、ハンカチの下からコインを抜き出した後、手は自然と膝の辺りに行き、それはテーブルの陰になりますから、他の人から見えません。立ったままですと、コインを指先に持ったまましばらく立っている必要がありますから、なれないと気になると思います。

もう一つ、おそらくこれが一番重要なところだと思うのですが、ハンカチの下でマジシャンの指先からコインを取り除くとき、持ち方は親指と人差し指、中指の3本で持つようにします。親指だけ手前で、他の指は向こう側です。このとき、手を握ってはいけません。何度か、練習して、コインを持っていないときと同じような手つきになるよう、練習してください。実際には、手を抜いてから下におろすまでは1秒とかかりませんから、少々不自然でも気づかれることはないのですが、余計な緊張が入ると、その気配が周りの人に伝わります。決して、急がないでください。普通の速度で、自然にコインが取れるようにしてください。

もしあなたがこのマジックをやりたいのなら、一度、あなた自身が助手になってみて、練習してみてください。すると、助手のミスしやすい点がわかるはずです。

★★最後に

このマジックは、助手(サクラ)を使う、きわめてめずらしいマジックです。アマチュアはなるべくこのようなことをやらない方がよいのですが、うまく使うと、絶大な効果を上げることが出来ます。しっかり助手の人と練習してからやってください。あなたばかりよい気分になっても助手の人がひがみますから、たまには助手と演者を交代してもよいでしょう。

また、これはどのようなマジックにも当てはまることですが、決しては2回はやらないでください。その日は1回しかやらないことが大切です。

マジェイア記


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