マジシャン紹介

アルバート・ゴッシュマン

Albert Goshman(1920-1991)

ゴッシュマン

  2000/10/4 記


アメリカのクロースアップマジシャン。

ニューヨークのブルックリンで父の代からパン屋をやっていましたが、1960年頃からプロマジシャンになりました。 当初は全米をレクチャーツアーをしながらまわっていました。ハリウッドにあるマジック・キャッスルのオーナー、ビル・ラーセンに認められ、キャッスルで数年間レギュラー出演するようになった頃から世界的にも知られるようになりました。

クロースアップマジックのショーではいつもテープレコーダーをもって現れ、左右に女性の観客に座ってもらいます。この二人にマジックを見せる場面を他の観客に見せるという演技スタイルをとっていました。ゴッシュマンのマジックで最も有名なものは塩のビンとコショウのビンを使ったものでしょう。コインを手の中に入れて、観客に「ゴー」と言ってもらうと、手に握ったコインが消えています。観客の前に置いてあった塩のビンを持ち上げてもらうと、ビンの下からコインが出現します。これが絶妙のミスディレクションと、観客の予想を裏切る構成で行われるため、何度も何度も観客は引っ掛かります。最後はビンの底よりも大きなコインが、ビンの下から出現します。

スポンジボールも大変有名です。演技自体は一般的なルーティンですが、彼はこのスポンジボールをゴッシュマン・ブランドとして販売していました。大変柔らかい素材でできており、私も1960年代の後半、はじめてゴッシュマンのスポンジボールに触れたときは感激しました。当時、日本にはこれほど柔らかいマジック専用のスポンジボールはなく、台所で食器類を洗うスポンジをはさみで切って、ボール状にしたものを使っていました。それと比べると、見た目の美しさや、握ったときの小さくなり具合など、アメリカにはすごい素材があるものだとうらやましくなったものです。

1970年にゴッシュマンが東京、大阪でレクチャーをしたとき、このスポンジボールを山のように持ってきて販売していました。マジックをやっている人であれば欲しくてたまらなかったボールですから、すぐに完売したようです。

これ以外によく知られているものとしては、デバノのライジングカードを使ったもの、銀貨と銅貨の入れ替わり現象を見せる「サン・アンド・ムーン」、トランプが新聞紙を通り抜ける「カード・スルー・ニューズペーパー」、観客にサインしてもらったトランプが小銭入れからでてくる「カード・イン・ザ・パース」等、数多くあります。

決して上品とは言えないキャラクターですが、強烈な個性で演じられるマジックはファンも多かったはずです。風貌からはちょっと想像できないほど、マジックについての考え方はしっかりしています。そのあたりのことは箴言集にも紹介しておきましたのでお読みください。

話が前後しますが、パン屋では食べて行けなくなったとき、それまで趣味でやっていたマジックを本職にしようかどうか、ずいぶん迷ったようです。そのため、すぐにプロマジシャンになったわけではありません。保険の外交員、赤ちゃん専門のカメラマン、アイスクリームの販売、レストラン用の厨房機器の販売等、数多くの仕事をしています。このとき多くの人と出会ったことが、後にプロマジシャンとしてスタートを切ったとき役にたっているようです。どのように幸せそうに見えている人でも、何らかの悩みは抱えているものだとわかりました。プロマジシャンになったときも、見に来てくれている観客の顔を見たとき、この人はどのような悩みがあるのかと想像してみると、自分の前に座っている人が「観客」から「個人」に変わり、共感と親しみを持ってその人と接することができるようになったそうです。

本はパトリック・ペイジとの共著になる"Magic by Gosh"(Albert Goshman,1985)があります。ゴッシュマンの代表的なマジック、自伝、マジックについての考え方など、参考になる部分の多い本です。ビデオは1987年に"Magic by Gosh"がでていますが、高齢になってから録画されたもののため、全盛期の迫力が感じられないのは少々残念です。

魔法都市の住人 マジェイア


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