★マーフィ岡田氏の御言葉
モノを売ることはアナタを売ること。
マーフィ岡田 (1944-)
『お客さんは買いたがっている!』(マーフィ岡田著、サンマーク出版,1999年9月)
マジェイアの蛇足
マーフィ岡田さんって、誰だか知っていますか?マジシャンではありません。マジシャンではないのですが、魔法のように何でも売ってしまう人です。この人なら、北極に住んでいる人にさえ、冷蔵庫でも売ってしまうと思えるような人です。
実際は、デパートで洗剤や包丁、焦げ付かないフライパンなどを実演しながら販売している人です。今では「デモンストレーター」と呼ばれているようですが、昔は確か、「実演販売員」と呼ばれていたと思います。商品を実演しながら、しゃべりのおもしろさや、扱っている商品の長所を120%くらいまで引き出して、客の購買意欲を駆り立てています。このような人たちの中でも、圧倒的な知名度と、実力があるのがマーフィ岡田さんです。
あのような場所で販売されている商品は、必ずしも絶対必要というわけではないけれど、あれば便利だと、見ている人に感じさせるようなものでないと売れません。と言っても、客もバカではありませんから、まったく役に立たないものをいくら言葉巧みに説明しても、そのようなウソは見抜いてしまいます。実際にある程度、便利なものでないと売れません。では、商品がよければ誰が売っても売れるかというと、決してそのようなことはありません。デパートの商品ケースに並べてあるようなものでも、店員によって売り上げに差は出るでしょうが、実演販売の場合、販売員によって、同じ商品を売ったとしても、売り上げには天と地ほどの差が出ることは珍しくありません。扱っている商品は同じなのですから、違いは販売員にしかありません。
つまり、「モノを売ることはアナタを売ること」なのです。それは「誠実さ」であったり、「かっこよさ」であったり、「おもしろさ」であったりするのでしょうが、自分自身のセールスポイントをよく知って、その部分を商品に付け加えることができる人だけが、この世界で成功します。見かけほどなま易しい世界ではありません。
この言葉は、以前、紹介したアルバート・ゴッシュマンの"You are the Magic!"と同じことです。マジシャンはマジックを見せていますが、そのマジシャンが観客に受け入れられるかどうかは、実演するトリックで決まるのではなく、そのマジシャンの人柄、つまりはその人そのものが受け入れられるかどうかです。アマチュアは「ウケるトリック」を追い求めて、本やビデオを集め、ショップに通い、レクチャーや公演に出たりしますが、先のようなことを自覚していない限り、いくら数を追い求めても無駄であることを警告しています。
マーフィ岡田さんの本では、自分でマニュアルを書くことの重要さも強調しています。他の販売員が使っているセリフなどで面白いものがあればそれをコピーすることはあっても、最終的には自分のキャラクターや、どこでそのセリフを入れるかといったことは、自分用の台本を作ってはじめて生きてきます。人のものを持ってきただけでは役に立ちません。
「モノを売ることはアナタを売ること」というセリフは、アマチュアマジシャンにとっても、よい警句となるはずです。「誰がやってもウケるトリック」などというものは存在しないのですから、ただ数だけを追い求めるより、少しでも気に入っているトリックがあるのなら、それに磨きをかけ、あなた自身のキャラクターに合わせることを意識したほうがずっと賢明です。そうすれば、それは「トリック」から「魔法」に昇格します。