<2013.01.27 K.Kotani>自主アニメ産業の可能性 2


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月刊近メ像インターネット


2013年1月27日

自主アニメ産業の可能性 2



 前稿では、「「アートアニメ(自主製作アニメ)」を作って、それを生活の糧とする事が、現在の日本ではとても難しいが、一部でものすごく売れた自主アニメもあった」事を述べて来た。

 この「ものすごく売れた自主アニメ」については改めて述べるとして、「その他のアートアニメ」を似たジャンルと比較してみよう。例えば油絵である。油絵を描いている人は日本にはとても沢山いる。しかし、油絵を描いて、それを売って、それで生活している人はほんの少ししかいない。ほとんどの人は、別に生計の道を持ち、「趣味として」油絵を描いているのである。

 ここで、アートアニメと違う点が一つある。少数であるが、自分の作品を描いてそれだけで生活している人がいる点である。

 街を歩けば、そのあたりにギャラリーがあり、売り物の絵が置いてある。油絵一枚が、例えば100万円で売れれば、絵を描いた人はそれで生活できるだろう。油絵というものはそういうものであり、「大金持ちのファン」が数人いれば、その人相手に描いていれば、生活が成り立つ可能性がある。「油絵」というのは、歴史的に王侯貴族相手の商売として営まれてきたものであり、少数の個人相手にオリジナルを売る商売なのである。

 一方、映像は、始まりが大衆相手の娯楽見せ物であり、「多数の観客から小額の観覧料を取る」事によって成り立ってきた。映像を見るには、映画館に行くか、CM付きの民放を観るか、NHKを視聴料を払って観るか、のいずれかだった。

 「映像を私有する」という事は、70年代までは、金持ちの道楽であった。家庭用ビデオデッキの普及により、ようやく「個人で映像を私有する」という事が可能となり、「ソフトを個人に売って商売にする」という事が始まった。VHS時代はソフトは一本1-2万円位の価格で売られ、お金が無い人の為、「レンタルビデオ」という商売が始まった。レンタルビデオ屋はオリジナルのビデオを少なくとも一本は購入するから、著作権者にもメリットがある。また、この頃は、「アニメソフトなら全部買う」という人が日本中に3000人位いたらしく、「アニメソフトは必ず3000本は出る」と言われていた。LD時代になり、価格はやや下がった。DVDに至り、ソフトを購入する事が無理の無い時代となった。

 が、ここで「無断複製」という問題が発生する。

 書籍の場合も過去に図書館での複製が問題になった事もあったが、たいがい本一冊丸々コピーするよりも本を買った方が安く、手間もかからない。大体、本というものは何百円のもので、さほど高価なものではない。

 ところが、映像ソフトは、高価な上、たいがい、再生時間と同じくらいの時間で複製が可能で、「借りて来て複製して私有する」という事が横行した。DVDに至っては、「オリジナルと同じ画質で複製する」事が可能となっている。また、「個人で私的に複製して私有する」のみならず、最近では「インターネット上の映像共有サイトで、著作権者に無断で、作品が無料で観られる状態になっている」という事が全世界で起こっており、アートアニメのみならず、商業作品でも、著作権者がまったく費用を回収できない状態で作品が公開されてしまい、問題となっている。

 この状況を逆手に取り、初めから制作費の回収を無視して、映像共有サイトで作品を発表する作家が今はかなりの数となっている。無料だからつまらないのかと思うと、必ずしもそうではなく、一部には非常にクォリティの高い作品もある。

 この「非常にクォリティの高い作品」の作者は全員、観客に「無料サービス」しているのかというとそうではなく、一部の作者は映像共有サイトを「無料のCM放送場所」として活用しており、「予告編」を流したり、また、自分の技量を誇示する場所とし、適切な就職場所を見つけるための「プレゼンテーション」を行っているのである。

「3」へ続く。  


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