<2013.01.28 K.Kotani>自主アニメ産業の可能性 4


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2013年1月28日

自主アニメ産業の可能性 4



 前稿では、「過去に商業的に成功した自主(アート)アニメ」について述べて来た。

 ここで、自主(アート)アニメについて、過去に試された、商業的に成功する可能性を考えてみよう。

 1.自主上映会を開いて、興行収入で利益を確保する。この方法は、過去にずっと試されて来た。DAICONの上映会や、初期のPAF(プライベート・アニメーション・フェスティバル)では多数の観客が集まり、会場費+αの売り上げが確保できた事もあった。現在でも有料上映会を劇場やホールなどを借りて開催している作家・団体も多い。しかし、会場費用その他を差し引くと赤字になったり、黒字が出ても、スタッフの人件費までは回らず、作家への配分は多くて千円単位で、ごく少数の例外を除いて、収益を上げ続ける方法とは言いがたい。

 2.作品をソフト化して販売する。この方法も、商業レーベルや個人販売で試されて来たが、前稿のようなごく少数の例外を除いて、まとまった利益を期待できる方法ではない。DAICONもどきのオープニングアニメや、新海誠風のアニメを制作する人も多くいたが、本家には遠くおよばず、「売れた」という話はあまり聞かない。

 3.映像コンテストに出品して賞金を稼ぐ。広島のグランプリでも100万円。各地のコンテストを総なめにする画期的作品でも作らない限り望みは無く、賞金をもらえる人はごく少数である。

 4.公的な支援を受けて、作品を制作する。北村愛子さんのツイッターにもあるが、日本ではアートアニメに対する公的支援制度はほとんどない。過去にKAVCで行われたブリート・パルン氏のトークによると、エストニアには公的支援制度があるらしく、作品制作前に絵コンテを提出して、補助金をもらっているとの事だった。ただし、もしこういう制度が日本にあったとしても、国際フェス入賞が狙えるレベルの作家でないと、対象にはならないだろう。

 5.企業や自治体にスポンサーになってもらう。「4」に準じたような形。アニメーションではないが、岡本太郎氏は、企業や自治体、公的団体から制作を受注するような形で数々の壁画や立体造形を制作していた。各地の自治体の施設に飾られている彫刻や絵画なども、著名な作家に依頼して制作されているものがほとんどだ。北海道の横須賀令子さんは、自治体より依頼されて「なまはげ」の水墨画アニメを制作した。しかし、アートアニメを企業や自治体が発注する事はさほど多くはない。NHKのプチプチアニメに一時70年代アニメーション作家が作品を発表した事があったが、多くは「一人一本」ずつに終わっている。

 6.CMやPVを受注する。これ、自主アニメではなく、単なる商業制作である。作風を評価されて制作するのであれば、多少ましか。

 以上が、自主製作アニメの商業的な可能性への考察である。

「5」へ続く。  


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