第三部
これも長くなってしまうので、別の機会に譲りますが、「仮面ライダー」は私にとってのバイブルです。 特に初代ライダーが私に与えた影響は計り知れません。 で、私が念願の仮面ライダーをやるとしたら、それは初代ライダーを ベースにするしかありません。 かといってあのまんまやってはただのパロディに終わってしまいます。 たとえ純粋なオリジナルではないとはいえ、いかに自分なりの「ライ ダー」をやるか? それが脚本執筆の前にスクリプトを立てていた私の命題でした。 当時、同じようなコンセプトで作られた映画がありました。「真・仮 面ライダー」という作品です。 原作の石ノ森章太郎先生が原点回帰を目指しただけあって仮面ライダーではなく、バッタ男という改造人間にスポットを当てた非常にアダルトで重厚な物語でした。 しかし、それを観た私の中にはひとつだけ納得いかない部分が残っていたのです。 それは、ヒーロー性が無いのです。 作品に出てきた真ライダーは醜悪な「モンスター」としか私には映ら ず、ヒーロー物に不可欠なカタルシスを感じられなかったのです。 それが不満であり、同時に似たようなコンセプトでライダーをやろう としている私の中にはやがて最初のテーマが生まれました。 「リアルな仮面ライダーを描く。しかし、ヒーロー性を失いはしない」 これは単純に見えて、実は非常に難しいテーマなのです。 ヒーローというのは元来、「無敵」という荒唐無稽な性格を宿命付け られています。 それを物語に取り込むと、まず「リアル」という部分が縮小してしま うのです。そして、ライダーに不可欠なテーマである「改造人間の哀 しみ」を描くために醜悪なバッタ男を徹底的にリアルに形成すると、 今度はヒーロー性が犠牲になってしまうのです。 この両者のバランスは非常に難しく、ともすれば物語自体の破錠を招く可能性があります。 「真・仮面ライダー」は恐らく後者をとったのでしょう。 で、私はどうしたかというと実はどちらでもない方法論をとったのです。 子供の頃から私が考えていたヒーロー像。それを素直に出したのです。 「ヒーローだって、最初から強いはずがない」 それが私の描くヒーロー論です。 「無敵」に至る前を徹底的に書き込む。そして、「人間」としての主 人公にスポットを当てる。 初代ライダーで私が一番影響を受けた「思い悩むヒーロー」。それを 深く掘り下げる事にしたのです。そして「改造人間」の哀しみも忘れ ずに描く。 私の中では物語の流れがライダー特有のアクションより、ドラマの比重が大きくなりはじめていました。
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