「5月12日」

外は春で、少し暑い
義理と人情で笑って見せて
ふと窓の外に目をやれば
アスファルトの上でスキップする日差し
かなわねえや、とぼやいてみせて
あとで一人で笑う

すれ違った女に
この道の行く先をたずねた
女は視線をもてあそびながら
「わたし しらないわぁ」
としなをつくる

黒い犬が一匹
俺に空腹と孤独を主張するので
俺はタバコに火をつけて
やつにくわえさせてやる

恋が実らないうちに
日が沈んでしまったので
今日はコーヒーを飲まずに
ねむってしまうことにした

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