「Hello World!」

青白く反射する鉄格子の中で
明滅する発光ダイオードと
4面の液晶パネルの明かりに照らされ
午前二時の暗闇。

Hello World!

私は食い扶持を稼ぎ
夢をつなぎ
友と会話し
詩を作っている。

Hello World!

ただカタカタと響く
メカニカルキーボードの音
この指先を通じ示された意識は
電磁気的思念として残留する。

Hello World!

そして、それぞれの画面で
明滅するカーソルは
私に次の行動を催促する
口を開けた雛鳥たち。

Hello World!

食い尽きぬ情報を
その腹に収めながら
中心を持たぬこの構造体は
どこまでも育ち続ける。

Hello World!

男性は己の能力の拡張に たまらない魅力を感じるのだという たとえば武器や、車のように コンピュータもまたその文脈か。
Hello World!

その誕生のときに
誰が予測しえただろうか
ありとあらゆる混沌を
飲み込もうとするこの姿を。

Hello World!

発光する画面の裏の電子回路は
光のパルスで世界とつながり
拡大する意識の境界線は
もはや誰にも引くことはできない。

Hello World!

そして夜の暗闇の中
怪しく照らされる私を
のんの少しだけ上空から
見つめている自分がいる。

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