「失語」
いつの頃からだか
自分に何が起きているのかには
目をそらすようになっていた
たまに言葉を忘れるんだ
何ヶ月とか、何年とか
たまに言葉を失うんだ
何ヶ月とか、何年とか
ただ
忘れたまま小さな生活の断片を
写真のように切り取って良しとしてきた
そして
言葉を忘れてしまっている間に
かなり長い時が流れてしまったらしい
既成事実はいつの間にか
鍋の焦げのようにこびり付き
やり直すことのできない失敗を
目の前に突き付けてくる
思い切りの悪さと
思いきるタイミングの悪さは
この何年でさらに磨きがかかり
けつまずいて転ぶより
もっとばつの悪いことになっている
年々醜悪になる姿は
運動不足のせいばかりではあるまい
いつの頃からだか待っていたはずの
そんな年代が来たのに
俺はまた、何も出来ない。
失ったのは、言葉ではなく、心だったのかもしれない