「紫陽花」

今年ももう、あじさいの花の季節になったのだね
たくさんの思い出が頭の中を駆け抜けていく
やわらかな雨の中に洗われた
憂いや恥じらいの色をした花が
耳には聞こえぬ歌を歌っている
今年ももう、そんな季節が来たのだね
あのときの少女は
今はどんな女性になっているだろうか
どんな物語を演じているだろうか

遠い昔に後にして来た街の面影が
六月の雨ににじんでゆく

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