「秒針」

いつの間にか
床に落下していた
僕の時計は
秒針がはずれている

長短の針は
その秒針に絡まってしまい
僕の時計は
もはや時を刻めない

つまずくのはいつも
とても些細なこと
永劫の中での
一秒のような
とても些細なこと

そんな止まった時計が
目の前にひとつ
そしてとまった時間が
記憶の中にいくつも

時を重ね
始めた事の数が
増えていくほど
終わらせられない苦悩と
終わらせてしまった後悔が
秒針のようにチクチクと そのあたりに刺さり
化膿した傷口の上
長短の針と悪態が
瘡蓋のように
積み重なり

いつの間にか
床に落下していた
僕の時計が
またひとつ増えている

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