「中禅寺湖」
凪いだ水面は
鮮明すぎるほどに
対岸の灯を映し
私は
水音すらかすかな
その湖の畔を歩く
空気は水と競うかのように
あくまでも涼しく
そして透明であり
湖との対話を
邪魔するものはいない
水は人を誘うのだ
億年の時を越えて
その証に
十年の時を経て
私はまたここに居る
私はしばしの禁煙と
清涼な深呼吸を楽しむ
夜が体の芯へと
染入ってくるのがわかる
夜の深さに
その湖底の深さを足して
ますますの静寂が
私の肩を抱く