「風景」

虹が見たかった
遠い昔に見た記憶があった
人を愛したかった
その方法がわからなかった
血の中にビルトインされた何かが
それより自己を守ろうと言った
君はいつまでも自己を否定し続けた
だけど君は知っていた
ただ俺が本気かどうかの判定法がわからなかった
俺の旅にロードマップは必要なかった
それより道連れがほしかった
木の下で休む時の話し相手がほしかった
長い間呼ばれたことがないので
俺は自分の名前をわすれかけていた
俺はいつも旅人だったが
決して死者ではなかった
だからこそ朝日は一瞬俺の目をくらませた
おれはそっと背筋を伸ばした

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