「冬泣」

絡みついた時間の郷愁
冬の冷たい風が涙を凍てつかせる
静かな街
ぬくもることは捨ててしまったのだから
震えてしまってはならない
アスファルトの上の薄氷
そこに夢はない
悲しい黒犬が踏み割っていく
みんな知りはしない
あの街で
この街で
俺は俺で、この今さえも
そして何かを見つけるたび
傷ついては嘲笑う
どんな傷も三日と持ちはしないのに
知っていたなら
もし
知っていたなら
泣いてもよいのだけれど

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