「GARAM」

丁子煙草の匂いが
駆けずり回っていたころを
思い出させてくれる。
今となっては煙草など
眉を顰められるのがいいところだが、
俺たちにとっては
もっとそう・・・

結局獣に近い。
言葉より確かに
匂いが過去を定義し
その記憶に直結している。

俺は結構今、
幸せに生きている
君はどうなんだろう
幸せだと良いのだけれど。
まだまだ人生煙に巻いて
相変わらずの俺だから。

こんな俺の体臭を
誰か記憶しているだろうか
ニコチンに満ちた
茶色い汗のこの臭いを。

丁子煙草の匂いが
あのころの青臭い言い訳を
思い出させてくれる。
決して若者ぶっていた気はないが
事実若かったから、
今よりはね。

嗅覚だけが信じられる。
思いより確かに
匂いの断片が呼ぶのだ
あの頃と、今とをつなぐ何かを。

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