「ガード下」

午後と午前が入れ替わるころ
ガラスケースに
ぎゅうぎゅうに吊るされ
陳列された疲れた顔たちが
蛍光灯の冷たい明かりに照らされて
轟音を上げながら
冷たいレールの上を滑って行く

やりきれない理不尽を
隣の他人への憎しみに変え
無関心と平静を装うように
立ったまま睡眠の仮面をかぶり
苦悩と鬱憤を洗い落とした
アルコールの匂いを漂わせ

(そんなにまでして
 何が欲しいのだ
 その代償に
 何を得たのだ)

そう、世の中には
口にしてよい事と
いけないことがある
わかっているから
みてみぬふりをするのだが

幾昔か前の
熱い恋愛と
その愛と呼んだものの
結晶とやらのために
(遺伝子を残すために)
身を削り
死んでゆくのだ

幸せなのだよ

そう感じていないとしても

午後と午前が入れ替わるころ
そろそろ終わるショーケースの行列を眺めながら
うらやまれそうな
酒を飲んでいる
しかし自由は
孤独と同義なのだと

どんな裏切りをしても
もう、あのショーケースには
戻れないから

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