「原稿用紙」

夜の言葉を私のために
朝の言葉をお前のために
書き散らした原稿用紙は
遠い日の夢

申し訳ないが
疲れてしまった。
愛していると言うことも
できればしたくない。

お前のせいではない
飽きたわけでもない
ただ疲れてしまったのだ
分かってはもらえないだろうが。

ぬぐいきれない眠気と
相反する不眠。
強張った表情筋と
妙なのどの渇き。

申し訳ないが
疲れてしまった。
もっとお前に夢中で
居続けられると良いのに。

もう後ろは無いのに
そんなことは運命にとって
知ったことではないらしく
どこまでも容赦なく追い詰めてくる

そうして逃げ続けているうちに
ずいぶんと離れた所へ来てしまった。
お前はいつも優しいのに、
お前の言葉はうれしいのに、
それがどうでも良いくらいに
ずいぶんと離れた所へきてしまった。


心の言葉を私のために
尽きせぬ言葉をお前のために
書き散らした原稿用紙は
あまりにも遠い日の、
夢。

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