「幻想の時代」

どなたか私の名前を知っていますか
私がどこからやってきたのか
そのときの私の荷物は何だったか
ここに来た私の第一声は
あなたは覚えては居ませんか
そしてどうした訳であなたと知り合ったか
いや、そんなことはどうでもいいのです
そこにおかけなさいい
そう、冬の夜には美味くもないドイツワインの赤がいい
そうはおもいませんか
血の色です
深く沈みこむような血の色です
さて、何から話したものだか
今日は外は雪でしたね
寒かったですか
いや、私は寒さを感じない事にしているので
私は冷たい人間に見えますか
そう、むかし私は歌っていました
だからあなたと友達になれたのかもしれませんね
ほら、そのペチカの上で私をぢっとみている
その緑色の猫がその頃の形見です
たまにそいつと昔話を楽しむんですよ
古いアルバムなんかを引っ張り出してきてね
どうです、あなた、冬の夜は長いし
ひとつ昔話に花でも咲かせませんか
2人でグラスを傾けながら

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