「幻雨」

深呼吸をするつもりで
見上げた青空から
降るはずのない雨
見えているつもりの景色を
ノイズのようにちらつかせる
本降りになる前に
けりをつけなくては
それは心の迷いなのか

追われるオフィスの
ディスプレイの中に
嘲笑いもしない雨
液晶ディスプレイの文字は
にじむ事もなく並び
少し大きくなった雨粒は
無視しても良いのか
それともあせりなのか

何もぬらさぬ雨が
何も育てぬ雨が

向き合う君との間の
ほんの50cmの隙間に
視界をさえぎる雨
雨音は聞こえないのに
君の声を掻き消し
君には見えない雨は
その笑顔を曇らせもせず
そんなに乾いているのか

寝息だけが聞こえる
暗闇のベッドの上で
見上げた暗い天井から
まだ、雨が降り続く

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