「箱庭の街」

屋根瓦の上をなだれ落ちた
午前10時
春の日差し

空は遠く晴れ渡っているが
決してそれが暖かな午後を保障するわけではない
まるでそのことを強調するかのごとく
街は顔色ひとつ変えずに横たわっている

人通りの無い住宅街は
まるで映画のセットのようで
角を曲がったあたりには
マネキンが立っている

生きてはいない私を映すように
街は今生きてはいない

太陽の光がつむじ風になっているあたりに
震えている小さな雑草さえ
本当は仕組まれた嘘なのかもしれない

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