「悲劇」
幼虫がうごめく 石の間で 私は夢を見る 昨日の道も たぶん もうないだろう 幻想色の極限で 何かの夢を なくしたから そのうち夕日の中で 線がのびる ガラスを引っ張ったような ガラスを引掻く音 つめの音 追うものの音 なくものの音 それでも悲劇は音もなく きれいな悲鳴をあげた
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