「光のどけき春の日に」

『ひさかたの 光のどけき 春の日に
  しづ心なく 花の散るらん』

この美しすぎるほど晴れた春の日に
この 心も和らぐ 風の中に
なにゆえそなたの去り行くを
見送らねばならぬのでしょう
これほどに暖かい春だというのに
街はほほえみに満ちているというのに
なにゆえそなたは別れを告げるのでしょう
咲く花の いずれは散り行く理を
知らぬわけではないといえ
その時のもはや来たれりと
そなたは今告げるのですか
ほんのわずかの思い出すらも
刻む間すらないままに
さようなら。春の日の暮れる前に
そなたここを去りたまえ
さようなら。たそがれに涙落ちぬうちに
そなた ここを

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