「戦のあとで」

焼けトタンとがれきの上の
ラッパの音
虚勢とか、恐れとか
そんなもの・・・
トンボ、トンボ、トンボ、トンボ
秋津島の秋津群れ
そんな1945年秋
その年の夏は悲劇!
でも私には紙の上のこと
2000フィートの高さにある
真っ白い光の玉
紙の上のこと
B29の爆音と
高射砲の空薬莢の山
紙の上のこと
夕日さす焼け跡には
たぶん
むせびなく少女がいたことだろう
そしてそのそばに
一本の雑草が焼け残って咲いていたのだろう
そうじゃなければ
悲しすぎる
紙の上にも
悲しすぎる

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