「住宅街」

侵食大地の
がけの端に
グロテスクに並ぶ
家々に

もぞもぞと蠢く
日常たちが
緩やかな
鳥肌を誘う

立ち並ぶ
テレビアンテナは
まるで空をまさぐる
触手のように
ベランダに干された
洗濯物は
吐き出された
臓物のように

せめて彼ららの声が
耳に届かぬことを
幸せとしようではないか
それは耐え難い
それは御し難い
嫌悪を誘うだろうから

蜂の巣ほどの
構成の美学も無く
蛆の群れほどの
統率のかけらも無く
ただ猥雑に
日との巣くうは
集積し

個性と言う名の
不協和音と
生活と言う名の
汚点と

この混沌と憎悪は
日々増大を続けている

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