「過剰演出」

 雨の日の風景は
 その距離感と質感を増し
 妙なほどに生々しく
 そのくせどこかよそよそしい


とどのつまりが
どん詰まり
この突き当たりの風景も
何度か見た事がある
ここも歩きなれた道なんだが


 黄色い花の前に
 傘を差した君の印象は
 今迄で一番いとおしく
 そして一番遠い

夢は朝にはさめるもの
そしてもう
思い描いたような明日も無い
だからといって絶望するほど
希望も持っては居ないんだが


 雨にかき消された言葉でも
 意味は理解できたのだ
 そしてもう君の涙を
 ぬぐう事すら許されず

なんだろう
この後味の悪さは
はじめから顛末は見えていて
別に後悔など
しないつもりだったのだが


 雨の日の別れは
 その距離感と質感を増し
 皮肉なほどに生々しく
 そして寒い

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