「真夏日」

温度計は35度を
針一本超えたところで
でもその暑さの意味は
多分十年前とは違っている

痛いからやめろといっているのに
飼い猫は俺の汗をなめ続けて
塩分を補給しているらしい

まるでたちの悪い
耳鳴りのようだ
脳髄の根元から
ノイズが鳴り響く

汗でゆがんだ目の前を
物欲しそうに
蚊が飛んでゆく

あまりの日差しに
気のふれたように
セミが鳴いている

そして俺は今も
鳴かず飛ばずで

流れる汗はきっと
涙を誤魔化せるほどだが
今日はなんだか
泣く気にもなれない

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