「夏」

赤外線で太った雲が
街を押さえ込んでいる
僕はかげろふと共に
街を歩いている
焼け付いたアスファルトが
水を夢想している
こんな日
言葉は断片でしかなく
意思は幻でしかなく
夕立まで
あと一時間?
30分?
街の人たちは
それまで死を我慢できるだろうか
僕は今
今日の風の色を考えている
どうしても思いつかない
さっきそこで
白い少女が
だらしない空気に染まらぬよう
汗をかいて笑っていた
いまここで
狂った犬が
僕の顔を見上げながら
一生懸命笑っている
僕はまた歩きはじめる
かげろふと共に

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