「夏・幻」
構造としての都市は いつも美しく冷たい 人の香りに染まった町は 息の音すらさせずに 昼は汗の香に満ち 夜は酒の香に流る それは時に 巨大な軟体動物であり そして時に 生臭い臓物である。 しかし ひとたび雨が その表を洗うとき 街はその表情凍らせ 無機質のその骨格を露わにする 都市としての骨格 構造としての都市は いつも美しく冷たい
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