「夏の記憶」
なぜここに来たのだろう
記憶のページを繰ったが
その記録は無かった
いつからここに立っているのだろう
周りの風景は
どこかなつかしく
それでいて味気ないが
どうも長い物語らしい
その全てが欠落しているらしい
仕方なく
それらしい断片を
心の中に寄せ集める
赤い風車
彼岸花
ほおずき
坂を下る水路のしぶき
ガラスの風鈴
かき氷
掴んだつもりでいたのは
何だったのだろう
違うところにある
違うものだったのかもしれない
遠くからはいつもの音が聞こえている
人のざわめきなのか
それとも波音なのか
そもそも本当に
自分の記憶なのだろうか
それすらも記憶には無かった