「ぴょん」

晩春に似合わぬ寒さに
思わず目を覚ますと
いつもの通り君が
僕の隣に居て
なのに不吉な違和感
理解を超えた何か

それが何か知るまでに
時計の長い針が90度
その時間すら後悔するのは
その後カレンダー90枚

理解するより前に
僕は君の名を叫ぶ
しかし君はもう
答えてはくれない

いつも通りの朝に
ひとつだけ違った事
そのときすでに
君の心は冷たくなっていた

僕は事態を受け入れられず
君の心に触る
だけど君の心は
もう硬直を始め
まるで陶器のように
重く
冷たく
硬く

抱き上げてみても
置物のように
その姿勢を変えようともせず
ずっしりとした悲しみが
僕の両の手のひらに
乗っているだけで
それはなじまないのだ

悪夢を祈っても
醒める気配も無く
混乱する思考に
役立たない知識

その固まった心を
ほぐさなくては
もう一度脈動を
呼び覚まさなくては

必死にその骸を
もてあそぶ手は
しかしまるで
冒涜のようで

ごめん

僕は受け入れなくてはいけないのだね
君の心が旅立ったという事を

小さく見える
君の心の亡骸の前で
僕はみっともなく泣いた
日が暮れるまで

君と離れたくは無かったので
家にあった安いウォッカと
卵焼きとコンビーフを
君との最後の晩餐にして
もう少し泣いた

もっと眺めて居たかった
でも、こんな気候で
君を放置するのも気が引けて
だから、早く
ゆっくりと

早朝の靄の中
未練と闘いながら
白いネルでくるんだ君の心を
穴の底に横たえ
痛くないように
そっと
土をかぶせる

君は幸せだったかい
僕は優しかったかい

まだ君に
理由を聞いていない

僕はまだ
生きられるだろうか

一人で行くなんて


もう触れられない

君の心に問う

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