「砂丘」

俺は今砂丘を登る
砂に取られた足は
まるで役立たずの棒で
踏み出しても踏み出しても
前には進めない

がんばれば、報われるなんて
思ってはいない
信じれば、救われるなんて
信じてはいない

それでも俺は砂丘を登る
一歩踏み出すごとに
足元の砂は崩れ
いつこの丘を越えられるかも
わかりはしないけれど

誰かがめくったカードに
従う気は、はなから無い
奇跡なんかが起きると
本気で期待しているわけでもないが

砂丘の砂は笑いながら
俺の口に目に耳にと入り
閉口する俺からは
もはや上を見る気力も
失せてしまっているが

今いる場所と
さっきいた場所が
違うかどうかすらも
わかりはしないのだが

それでも俺は砂丘を登る
足元の砂は崩れ続け
登っているのは気持ちだけで
本当は一歩たりと
進めちゃいないとしても

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