「そして遅すぎる悼辞」

お前がこの次元を去った後
どれくらいの時がたったのだろう
私の感覚の中に
お前はまだいるから
私にはその時間が分からない

ここにはいない
お前はここにはいない
それは知っていても
いない事として理解はできない
お前がどこにいるのかは知らないから

お前の名前を呼んでもよいか

一緒に居れるとも思わない
同じ時を過ごせたかも知らない
私もここを去る時がくるのだろうが
いつかは帰ろうと想っている
その場所を私は知りはしない

お前の声が思い出せない
その感触は覚えているのに
声を聞いたことがあったはずで
でも何を話したのか
それすらも思い出せない

私の名前を呼んでくれないか

私がこの場所を去るまで
どのくらいの時があるのか
もちろん知ってなどいない
お前はそれを見るだろうか
それとも気付きもしないだろうか

そろそろ行かなくては
体を起こして表側の世界に
いろいろな心残りがあるが
知りたいのはお前が誰だったのか
もう間に合わないのだけれど

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