「椿」
椿の花が どこか物悲しげに見えるのは なぜだろう 艶やかな赤に 金の花芯 薄紅の八重 大輪の 美しい花形をもってなお 寂しさをたたえるのは なぜだろう 無邪気に 咲き誇るのではなく 妖艶に 魅せ付けるのでもなく 艶葉の間に 咲き、落ちる花は 大粒の血涙に通じ か弱さではない その咲き様は はかなさすらも 飲み込むようで 椿の花は ただ寡黙だ
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