「椿」

椿の花が
どこか物悲しげに見えるのは
なぜだろう

艶やかな赤に
金の花芯
薄紅の八重

大輪の
美しい花形をもってなお
寂しさをたたえるのは
なぜだろう

無邪気に
咲き誇るのではなく
妖艶に
魅せ付けるのでもなく

艶葉の間に
咲き、落ちる花は
大粒の血涙に通じ

か弱さではない
その咲き様は
はかなさすらも
飲み込むようで

椿の花は
ただ寡黙だ

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