「追憶」

僕には聞こえていると
君の声が聞こえていると
はるかな時間がそれを消していくと
死ぬ時まで覚えていたい。
それはもう
鮮やかな彩りの絶望であると
はるかな歴史の埋葬であると
僕のセンチメンタルな空想であると
知っているのだ。
多くの人々がここを通ったように
僕もまた思い出の中にこの場所を刻む
それは夢でなく
愛だったと。
いつか再び振り返ることがあるのなら
僕はここに自分の墓碑を見よう
そこで温かい僕の体がねむっているのだと
大人の笑いを不器用な左頬にうかべよう
はるかな追憶として

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