「詠えない」
焦っていたのだ
そんな優しい気持ちではない
そんな繊細な言葉でもない
だが
誰かに伝えなくてはいけない
私がここを去る前に
そんな風に
突き動かされていたのだ
しかし
自らのことしか語れない
偏狭な語彙で
何を伝えようというのだ
あまりに不誠実に
言葉をもてあそんでいると
そのうち舌が腐る気がする
自分の心すら動かないのに
誰の心動をかせるはずも無い
ただ無意味な言葉の羅列を
それでも止められないのは何故だ
振り返れば何かが
落ちているかもしれないと思ったが
だとしても
もはやそこまで
取りに戻る気力も無い
まだ、私の言葉で伝わるだろうか