「今私は野良猫の話しをしている」

こうして会うのも久しぶりだね
街は変わったようでも昔のままで
君などはどうなのだろうか
私はすっかり変わってしまったけれどね。
私の顔を見てごらん
まるで飢えた野良猫のようだ。
そう、気がついたときにはもう遅い
すべてが流れていってしまった後さ。
いろいろな予感が私を焦らせたのだよ
それでも尚、私は裏切ったのだ
それが君らの口に出した望みだったから。
言葉に出さずとも通じるなどという優しい夢は
もはや捨ててしまっていたのだよ
なぜなら
この街を吹き抜ける風はいつでも乾いていたからね。
私のためのテーブルは用意されたこともない
いつだって所在投げに放り出されたポリバケツ
その中にある残り物をむさぼって来たのだ。
私の顔を見てごらん
まるで飢えた野良猫のようだ。

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