「横浜」

きれいなビルの合間にぽつんと建つ
見事な石造りの古い建物や、
まるで異空間のようにある
赤レンガ造りの建物が、
まるで何かを言いたげで、
だが、その言葉が聞こえるほど
私はこの街に親しくない。

船の汽笛が聞こえている。

よく流行り歌に歌われたこの街は
どこかしゃれた空気をまとっていて、
そこを歩いている私は
ちょっとした高揚感を覚えている。
まだ緑の残る並木の道を行くのは
およそ現代的なビルに吸い込まれていく
ビジネスマンたち。

石畳の音こつこつと。

しかしそれだけではない。
不思議な感覚がある。
おそらくガス灯が燈った昔から
街を包んでいたであろうモダンの風が
ここには今もある。
そして街を歩く私は
異邦人のように悪意無く疎外される。

この街に恋するものの心持が
少し私にも見えたのかもしれない。

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