「夕張」

炭鉱の町には
そろそろ雪が降り出した頃だろう
雪には慣れているはずの土地柄だが
今年の寒さは骨身にしみる
その町の寒さはますますひどくなり
この先何年も冬が続くらしい

何十年の間
真っ黒に汚れた命がけの男達が
その町を支えてきた
熱気と活気が町の空気だった
(今思えばあのときから
  搾取は続いていたのだ)

点在するきらびやかな建物は
愚かな過ちだったのかも知れない
過去の栄光は二度と
町を照らすことは無いだろう
だからといってへし折られ
使い捨てられる町

美しい国だとか強い国だとか
調子のいい声が上からは聞こえる

彼らの中でそれは簡単な事なのだ
美しい国にするためには
醜い者を切り捨てればいい
強い国にするためには
弱い者を駆逐すればいい
活力のある国にするためには
老いた者を排除すればいい

今年も
雪はものも言わずに
炭鉱の町を包んでゆく
その雪はいずれ
私の上にも降るのだろう

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